本当にお金に困ったとき、あなたはどんな行動を取りますか──? 44才・会社員の女性・Kさんが、中学の同窓会で起きたエピソードを告白する。
* * *
中学校の同窓会に、20年ぶりに参加しました。会は盛り上がり、2次会に行こうと店を出ると、外では不穏な空気が漂っていました。
「お金を貸してくれないか」
そう話していたのは、同級生のAくんでした。当時は髪を染めて悪ぶっていたのですが、真面目に親の家業を継いだという噂を、聞いたことがありました。
「店がつぶれそうなんだ。1年以内に、必ず返すから」
Aくんはあちこちに頭を下げています。彼は同窓会には参加していなかったのですが、お金を無心するために、同窓会が終わるのを待ってやってきたのでした。
「こいつが返すわけない」
そう呟いたのは、中学時代にAくんにからかわれていたクラスメートです。その声に、「そうだよな」と同調する声が。それでもAくんは、白髪交じりの頭を「お願いします」と、ひたすら下げています。
必死なAくんの姿を見ていられず、私は、返してもらわないつもりで「少ないけど」と、3万円渡しました。Aくんは驚いた表情で顔を上げると、「ありがとう! 絶対に返すから」と、私の手をギュっと握りました。
それから約束の1年が過ぎ、さらに半年が経った頃。Aくんから電話がありました。約束の喫茶店で待っていると、スーツを着たAくんが来て、「遅くなってごめん」と、3万円が入った封筒を渡してくれました。
「こんなおれに金を貸してくれた時、人生捨てたもんじゃないって思えたよ。生きる希望になったんだ。本当にありがとう!」
そう言って涙を浮かべるAくん。正直、彼を信じきれていなかった自分が恥ずかしくなりました。私の方がAくんから、大切なものを学んだ気がしました。
※女性セブン2015年11月26日号