中国で数千万人が死亡したとされる文化大革命(1966~1976年)期に、毛沢東や夫人の江青らによって称賛され、各地で上演された革命劇「白毛女」が今月初旬、革命の聖地、陝西省延安で再演されたのを皮切りに、全国で大々的に巡業が行われることが分かった。BBC放送が報じた。
白毛女は毛沢東主席や江青ら「四人組」が当時の実権派である劉少奇・国家主席やトウ小平・副首相らを倒すため、権力闘争に利用したされる革命劇だが、中国内ではいまさらの復活に眉を顰める向きが強い。
しかも、そのような白毛女の再演を強力に推進したのが習近平主席で、演出を担当したのは習近平夫人の彭麗媛氏で、習氏らは政治に利用するために、再び文革の悲劇を繰り返そうとしているのではないかとの声も出ている。
白毛女は文革期に上演が許された8大革命歌劇のひとつ。映画化やバレエ化もされた。テーマは「国民党支配下の旧社会は、人間を鬼(妖怪)にするが、共産党による新社会は鬼をも人間に変える」というもの。
その内容は、国民党統治下で地主から迫害された貧農の娘が山に逃げ込み、黒髪が白髪に変わるほど苦労するが、共産党傘下の人民解放軍に助け出されて、国民党打倒の運動に参加していくうちに人間性が戻り、白髪も元の黒髪に戻り最後は幸せに暮すというもの。
もともとは延安の魯迅芸術学院で創作された革命劇で、文革期に毛沢東思想の正しさを宣揚するために、大々的に上演された。
これについて、習氏が1年前の文芸座談会で大変に優れた劇であり、いまもその価値は変わらないなどと絶賛。最近、国営新華社通信を通じて、習氏の重要講話の全文が公開されたことをきっかけに、復活となったとみられる。
BBCによると、その復活の初演が陝西省延安で行われたが、その演出を担当したのが彭麗媛氏で、夫の呼びかけに応じた形だ。
彭麗媛氏は「中国の歌姫」と呼ばれるほどの往年の大スターだが、文革当時の毛沢東夫人の江青も映画俳優出身で、白毛女の上演に当たっては演出を担当しており、今回の彭麗媛氏の演出で毛沢東を崇拝する習氏にとっては面目躍如だが、ネット上では「おそろいの夫婦がまたも中国を政治的混乱に陥れようとしている」との書き込みが目立っている。