プロ野球において年俸はその選手に対する評価であると同時に、期待度の表われでもある。莫大なカネを手にする選手は、金額に応じた活躍を見せなければ手厳しいブーイングに晒されても仕方がない。では今季、最もコストパフォーマンスが悪かった選手は誰か。集計は『プロ野球なんでもランキング』(イースト・プレス刊)など野球関係の著書が多いライター・広尾晃氏に依頼した。
野手部門はセイバーメトリクスの「RC」という指標で判断した。これは盗塁や犠打なども加味して算出する選手個人の得点能力を示す数値だ。各選手のRC値を合計すると、そのチームの総得点とほぼ同じになる。
「打席数が多いほどRC値を稼ぐ機会も増える。今年はRC140をマークした柳田悠岐(ソフトバンク)のように、ずば抜けた数値を記録した選手が出ましたが、一般に70以上あれば一流選手といわれます。レギュラーでは50以上ないと格好がつかない」(広尾氏。以下「」内同)
ワーストで群を抜いているのは巨人の外国人勢だ。1位のセペダ、2位のフランシスコは巨人が抱えた超不良債権。ともにRCは1にも満たない。
「セペダは1億5000万円ながら、四球を7個選んだだけ。フランシスコは1億4300万円でヒット3本のみ。無駄遣いの象徴みたいなものでした」
同じく外国人が不良債権化したのはヤクルト。バレンティン(年俸3億円)、ミレッジ(年俸2億2800万円)はともに今季は期待を裏切った。
「でもヤクルトはその穴を他の選手が埋めて優勝を勝ち取った。それに比べて巨人は、100試合以上出場して主砲としてチームを支えるべきだった2人が酷い成績で、目も当てられない状況でした。RC55の阿部慎之助と、同36の村田修一です。特に阿部クラスの年俸(5億1000万円)ではRCが100以上ないと見合わない。同じ意味では23位のマートン(阪神、年俸4億5600万円)も問題です」
一方、日本一になったソフトバンクの選手も目立つ。
「巨人と同じく高額年俸の選手が多いため、その非効率が際立つ。7位の長谷川勇也(年俸2億円)、8位の本多雄一(年俸1億8000万円)などは、若手の成長もあって効率の悪い選手になっている」
反対に最も効率が良かったのは、年俸400万円の中日の亀澤恭平。1得点あたり14万5500円のコストパフォーマンスで最高効率を叩き出した。2位のデニング(ヤクルト、年俸360万円)も好成績だ。
「BCリーグの新潟でプレーしていた選手で、故障で離脱したミレッジとバレンティンの代役として5月に緊急補強された。年俸360万円のかなりお買い得な選手だったといえます。この辺りの用兵の巧さが、ヤクルトの14年ぶりのセ・リーグ制覇に繋がったともいえます」
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号