「もし、私が○○の社長だったら……」と考えることを無限に繰り返す。これは企業の中で新たな商品や画期的なサービスを生み出そうとするビジネスマンにとって重要なトレーニングであると、大前研一氏は指摘する。経営コンサルタントとして日々、多くの企業の課題に向き合う大前氏が、その一例として「もし『日本スキー場開発(株)』の社長だったら」どう考えるかを解説する。
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「もし私が日本スキー場開発の鈴木周平社長だったら、スキー・スノーボード人口が減少する中で、どんな手を打つか」というケース・スタディで考えてみよう。
日本スキー場開発は、白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、栂池高原スキー場など7か所を運営して成功し、この10月には新たに菅平高原のハーレスキーリゾートを買収したマザーズ上場企業だ。
しかし、日本生産性本部の調査によれば、日本のスキー・スノーボード人口は1993年の1860万人をピークに年々減少し、2013年はピーク時の4割の770万人に落ち込んだ。近年は訪日外国人客の増加で減少に歯止めがかかる傾向も見られるが、基本的には少子化・高齢化が進む日本でスキー・スノーボード人口が大きく増える可能性はない。
そこで、中国、台湾、韓国、マレーシア、タイなど個別の国をターゲットにしたスキー場を造って外国人客を呼び込むというのが私の提案である。向こうの旅行会社やデベロッパーと協力し、言語、食事、看板や標識、インストラクターなどすべての設備とサービスを町ごと、スキー場ごと、その国向けにしてしまうのだ。中国の場合は北京、香港、上海、広州、大連など日本向けの航空路線を持つ大都市別でもよいだろう。
そうする理由は、各スキー場がそれらすべての国の言語や食事に対応するのは不可能だからである。肝心なことは、日本のスキー場は初心者向けのものが多いので、アジアの新興国の初心者に“自国の雰囲気”で楽しんでもらう町を作ってあげることだ。
2018年には韓国・平昌、2022年には北京で冬季オリンピックが開催されるので、これから韓国や中国でウインタースポーツがブームになるのは間違いない。その人たちを呼び込むことができれば、日本のスキー場は一気に蘇るはずだ。
※SAPIO2015年12月号