「もし、私が○○の社長だったら……」と考えることを無限に繰り返す。これは企業の中で新たな商品や画期的なサービスを生み出そうとするビジネスマンにとって重要なトレーニングであると、大前研一氏は指摘する。経営コンサルタントとして日々、多くの企業の課題に向き合う大前氏が、その一例として「もし『茨城県知事』だったら」どう考えるかを解説する。
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「もし○○だったら」のケース・スタディは、「企業の社長」だけでなく、行政のリーダーという想定でもよい。たとえば「もし私が都道府県魅力度ランキングで3年連続最下位になった茨城県の橋本昌知事だったら、どのようにして順位を上げるか」。
茨城県については納豆や水戸偕楽園くらいしか思い浮かばない人が多いかもしれないが、実はピーマン、白菜、レタス、茄子、蓮根、メロン、鶏卵、マイワシ、サバ類、養殖のアユやエビ類など、全国シェア1位や上位の農畜産物・水産物がたくさんある。
それらを全部足してみると、茨城産の新鮮な食材を活用した “グルメ県”というコンセプトが出てくる。ただし、県全体では範囲が広すぎるので、どこか1都市を地産地消のグルメタウンとして売り出すのがよいだろう。
具体的には、流行のB級グルメではなく超A級の世界的な料理人を10人連れてきて、ミシュラン星付きクラスのレストランが並ぶ街を作るのだ。美食の街として世界的に有名なサン・セバスチャン(スペイン・バスク地方)の茨城版である。もし私が茨城県知事だったら、県の魅力度向上策は、この1点に集中する。
※SAPIO2015年12月号