今年9月、国立がん研究センターはがん患者の「5年相対生存率」(5年生存率)を全国規模で調査・集計し、初めて公表した。集計対象は、宮崎県をのぞく全国46都道府県にある177のがん診療連携拠点病院(がん拠点病院)で、2007年にがんと診断された患者約17万人。これらの患者が日本人全体と比較して、5年後にどれだけ生存しているかを示すのが「5年相対生存率」だ。全がんと、主要5部位(胃、大腸、肝臓、肺、女性乳房)のデータがそれぞれ公表された。
5年生存率が5大がんのなかで最も高い乳がん(92.2%)は、都道府県別で見ても1位の長野(96.1%)からワーストの青森(81.1%)まで8割以上となった。がん治療に詳しい長尾クリニックの長尾和宏医師は「希望の持てる統計」という。
「患者が5年後に9割以上も生存しているのは喜ばしいことです。乳がんは早期発見がしやすく、遅く発見されても治療しやすくなった印象です」
確かに乳がんは比較的若年時に早期で見つかりやすく、手術がしやすい特徴がある。 乳がんの5年生存率が全国トップの長野は「がん治療先進県」だ。今回の調査でも全がんの5年生存率は全国2位。「がん死亡率ランキング」ではこの20年トップを走る。
他県がうらやむ好成績の理由について、がん拠点病院である長野赤十字病院の担当者は「がん診療の向上」を理由にあげる。
「長野県では行政による『がん診療連携拠点病院整備検討委員会』が拠点病院の調査・評価を定期的に実施し、会合では県内の拠点病院の関係者が互いに学びあっています。そうした取り組みにより、がん診療が向上していると考えられます」
※SAPIO2015年12月号