国立がん研究センターは今年9月、がん患者の「5年相対生存率」(5年生存率)を全国規模で調査・集計し、初めて公表した。集計対象は、宮崎県をのぞく全国46都道府県にある177のがん診療連携拠点病院(がん拠点病院)で、2007年にがんと診断された患者約17万人。これらの患者が日本人全体と比較して、5年後にどれだけ生存しているかを示すのが「5年相対生存率」だ。がんの治療成績を示す指標となる。
胃がんの5年生存率の全国平均は71.2%。トップの東京が78.8%、ワーストの群馬が60.9%だった。
全国平均が7割を超えたのは、がん検診での内視鏡検査などにより早期発見がしやすくなったことと、治療法の発展で治療成績が向上したからと考えられる。この調査結果を予測医学研究所所長で医師の高山哲朗氏が分析する。
「東京、福井、長野など5年生存率が高い地域では、患者の年齢が比較的若く、早い病期でがんと診断されています。胃がんは早期で発見すると手術がしやすいので、その後の5年生存率が高くなると推測されます」
がんの進行度を示す「病期」は0期~IV期の5つのステージで表される。今回の調査では、胃がんの5年生存率が高い地域ほどI期の割合が多かった。5年生存率が全国2位(77.7%)だった福井県健康福祉部の担当者がいう。
「福井県では30年前からがん登録を行っており、医師のがんに対する意識も高い。診察に来た患者に対して“がん検診はしましたか”といった呼びかけを実施しています。こうした取り組みが早期発見の割合を高くしている理由の一つと考えられます」
実際、今回の調査において、I期で胃がん治療を開始した人の割合は全国平均62.3%に対し、福井は70.1%と全国トップクラスの値だった。
がん拠点病院である福井県立病院の担当者は「医師の診断レベル」も5年生存率が高い理由のひとつという。
「福井の医療現場では胃がんなど消化器がんの早期発見に力を入れており、がん検診の勉強会や患者への受診勧奨を熱心に行っています。早期発見のための勉強会も盛んで、開業医を含めた消化器内視鏡診断のレベルが高いことも好成績の理由でしょう」
※SAPIO2015年12月号