中国共産党は約8800万人の党員を対象にした新倫理規定を発表し、汚職や不適切な性関係に加え、ゴルフも禁止した。これまでも、ゴルフ場を造ったり、維持するには膨大な土地と大量の水などの資源が無駄になるとして、幹部は事実上、ゴルフを禁止されていたが、明文化されたのは初めて。
ゴルフ嫌いとされる習近平国家主席の強い意向が働いているのは明らかだが、「ゴルフはビジネス関係の潤滑油で、良い面もある。やり過ぎだ。習氏が好きなサッカーも同じスポーツであり、ゴルフを禁止するのならば、サッカーも禁止すべき」との声も出ている。
新倫理規定は正式には「党員が守らなければならない道徳的倫理規定」という名称。これに「ゴルフ禁止令」が加えられたのは「グリーン上での接待ゴルフが汚職や不正取引を生む温床となっている」ためで、「共産党員は公私を混同せず、公的利益を優先して利他的態度で勤労に励まなければならない」と規定から逸脱するとみなされたことからで、党員は今後、コースでプレーすることも、会員権の所有もご法度となる。
違反した場合の罰則は明文化されていないが、「新倫理規定は刑法に優先する」と中国メディアは伝えており、違反者は「党籍はく奪」などの厳罰が下される可能性がある。中国は党員の天下だけに、党籍はく奪は党や政府の職務を解任され、生活基盤が崩壊することを意味しており、極めて重い罰則となる。
中国ではゴルフは「ブルジョアの遊び」とみなされており、中国に初めてゴルフ場ができたのは1984年とゴルフの歴史は浅い。最高幹部としては、かつては趙紫陽・元党総書記がしばしばゴルフを楽しんだが、1989年の天安門事件で失脚したこともあって、その後ゴルフをたしなむ最高幹部は出ていない。
習近平主席は2013年6月の訪米の際、米側はゴルフ好きのオバマ大統領と習氏とのゴルフ場での首脳会談をセットしたものの、習氏がかたくなに拒んだことで、米側が当惑したと伝えられる。
このため、今回の党の新倫理規定にゴルフ禁止令が入ったのは、習氏の強い意向が反映されているのは確実。ネット上では「ゴルフは来年のリオデジャネイロ五輪の正式種目に入っており、純然たるスポーツ。習主席が好きなサッカーにも引けを取らないスポーツだけに、ゴルフを差別するのは抵抗できないということか」といった書き込みも見られる。