国民的シリーズ初の連続ドラマ作品、『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助』(テレビ東京系、毎週金曜夜8時)が好調だ。ハマちゃんこと浜崎伝助(濱田岳)の新入社員時代を描く今作では、映画版でハマちゃんを演じていた西田敏行がスーさんを演じていることでも話題だ。同ドラマの浅野太プロデューサーに、制作の裏側を訊いた。
──そもそも『釣りバカ日誌』をドラマ化しようと思ったのはどうしてですか?
浅野:金曜日の8時台という放送枠は、シニア女性が主な視聴者層だったんですが、そこを広げていきたいという目論見がありました。子供から大人、おじいちゃんおばあちゃんまで一緒に見ていただけるドラマにチャレンジするべきではないかという発想ですね。そんな時、家族で見られるような作品であり国民的シリーズ『釣りバカ日誌』のドラマ化というお話を松竹さんからいただいたんです。
──映画版でハマちゃんを演じていた西田敏行さんが、今回のドラマ版ではスーさんを演じています。この配役は、最初から決まっていたんですか?
浅野:スーさんの配役については、プロデューサー陣で何度も話し合いました。どうしても映画版の三國連太郎さんのイメージが大きすぎて、ハードルも高くなっていたんですが、もしかしたら映画でハマちゃんを演じていた西田さんなら、三國さんのイメージを超えられるかも…という意見が出てきたんですよ。
それと同時に『釣りバカ日誌』をドラマ化するなら、西田さんに挨拶に行かなくちゃいけないということもあって、スタッフとしてもどこかに少しでもいいから出演していただきたいなという気持ちもあったんです。それで、勝算もないまま、ダメ元で西田さんにオファーしてみたんですよ。
──西田さんの反応はどうだったんですか?
浅野:相当悩まれたみたいですね…。1か月ぐらいぼくらもお待ちして、お返事をいただきました。西田さんご本人は、『釣りバカ日誌』をまさかテレビでやるとは想像していなかったようですね。スーさん役でオファーが来た時は、「それはありえないでしょ」と思ったそうです。
でも5年前に映画がファイナルを迎えてから、ファンのみなさんから「ハマちゃん、ハマちゃん」と声を掛けられて、「釣りバカはもうやらないんですか?」と訊かれることも多かったそうです。そういった方々からの声も西田さんの中にはずっとあって、「もしかしたらこれはもう1回やれっていうことなのかな」と受け止められた、と。「ハマちゃんとして22年生きてきたことは全部捨てて、これからはスーさんとして生きていくんだ」とおっしゃっていただきました。これを聞いて泣きそうでしたね。感謝です。
──映画版も手がけた朝原雄三監督を起用したのは、どうしてですか?
浅野:やっぱり見ている人は映画版の『釣りバカ日誌』の延長戦を期待されるでしょうし、そこを裏切ってはいけないという思いはありました。だからこそ朝原監督にお任せしました。出演者も違うし、設定も現代ですし、新しいことだらけなんですが、空気感はやっぱり継承したいなって。みなさんがイメージしている『釣りバカ日誌』のツボはしっかり抑えるように努力しています。
──ちなみに『釣りバカ日誌』の“ツボ”とは具体的にどういった点だと思いますか?
浅野:公と私で、ハマちゃんとスーさんの立場が入れ替わる。そこの面白さ、メリハリですね。そして、とことん楽しい作品なので、何かを考えてみるよりは、世代を超えてみんなで楽しんで見られる、というところです。
くだらない笑いもたくさんですからね。西田さんもそこを追求していますよ。もちろん、話の裏側なんかを分析しながら楽しむドラマもありますが、『釣りバカ日誌』は考える必要もなく、ただ笑って見ていただければいいと思います。それでいて、ふといい話なんかも入ってくるので、そのあたりを素直に楽しんでいただけると、スタッフとしては嬉しいですね。