どんな大物だろうと天才だろうと、人生の中では思い悩み苦しむことがあった。そんな時に光を照らし道を示してくれた恩師の思い出は、今も色鮮やかに心に刻まれている。落語家の林家正蔵氏(52)が、そんな恩師へ感謝の言葉を語る。
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父の(林家)三平が亡くなってから、噺家、古典芸能など、あまたの世界の人に良くしていただきました。落語とは全く違う世界にいるのに、兄であり、父であり、哲学者であり、友人であり、師匠になってくれたのが所ジョージさんです。
所さんと出会ったのは、前座の修業が終わって、二つ目に昇進した頃でした。テレビにちょくちょく出させてもらうようになったころ、知り合いのディレクターが所さんの番組を担当していたので、最初は見学させてもらいました。次に通行人として出演し、その次はカンペ出し。そして番組出演、と階段を上っていきました。そこからは四六時中一緒でした。
所さんはとても柔和で、繊細で、時には厳しい。それに物事をいろんな方向から見ることをされる方ですね。正面や後ろから見るのは当たり前、時には斜め上や下から見たりすることを教わりました。
その所さんから真打襲名披露の時に、「渡したい物がある」といわれて「世田谷ベース」(※注)に行くと、手のひらに収まる大きさの桐の箱をいただいた。開けて見ると、ウチの家紋である花菱が刻まれた刀の鍔(つば)が入っている。しかもその鍔は銀色のラッカーで綺麗に塗装がされていた。
【※注/東京都世田谷区にある、所ジョージの事務所兼遊び場(趣味の車を保有するガレージ)のこと】
知り合いの古美術商によれば元は100万円以上の価値があるという。しかし、塗装したことで価値がゼロになったそうです。