今年10月の首都圏の新築マンションの発売戸数は2921戸で前年同月比6.5%減という大幅なマイナスを記録、契約率も70%を割り込んだ。一方、首都圏の中古マンション取引は8.4%増と絶好調だった。明暗が分かれた原因は、「傾斜マンション問題」だ。
「傾斜問題が発覚した10月中旬以降、購入希望者の間に不安が広がり、業界でも販売計画を見直す動きが広がった。新築は完成前に契約するので、購入者は欠陥があるかどうかを確かめられない。その点、中古は実際に物件を見て状態を確認できるので、人気が高まっている」(仲介業者)
さらに安倍政権の発足以来続いているインフレ政策と低金利で需要が増え、新築マンションが高騰している影響もあると指摘するのは、不動産売買の情報サイト・SUUMOの池本洋一編集長だ。
「東京23区圏平均の新築マンション成約価格は、3年前に5000万円だったのに対し、現在では7000万円近くまで値上がりしています。そのあおりで新築に手が出ない人たちが中古市場に流れ込んでいます。一戸建てや郊外は横ばいですが、とくに都心での上昇が目立っています」
中古マンションは東京23区で成約平均価格が3年前の3000万円から現在は3500万円に上がっている。
今住んでいるマンションの売買を考えている人にはチャンス到来といえそうだが、“売り時”がいつまでも続くわけではない。池本氏は「オリンピック前の2018年まで」と予測するが、『素人でもできる賢くマンション・住宅を売る方法』(週刊住宅新聞社刊)の著者でエージェントサービス社長の石井成光氏は来年9月が節目だと見る。
「2017年4月に消費増税が予定されており、不動産の場合は2016年10月1日以降の契約に10%の消費税がかかる。そのため2016年10月以降は買い手が減り、価格も下落に転じるとの見方が強い。自宅マンションを売るなら早めのほうがいい」
とくにシニア層では、「マンションを売りたい」という人が増えている。子供が独立し、これまで住んでいたマンションが夫婦2人暮らしには広すぎる。売却して駅近の小さなマンションに住み替え、差額を老後資金に回したいと考える人は多い。マンションを売却した資金でアパートを建てて家賃収入を得て、自らは郊外の安い賃貸に住んで悠々自適の生活を送る人もいる。
「いかに高く自宅マンションを売却するか」は、老後を左右する大問題なのだ。
※週刊ポスト2015年12月11日号