中国が経済力だけでなく、外交でも世界をリードしようと活動している。しかし作家の落合信彦氏は民主主義国家でも法治国家でもない中国は、断じて大国ではないという。しかしアメリカはかつてのような「世界の警察」としての力を保っていない。今後、世界はどうなるのか、落合氏が分析する。
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アメリカが力を失ったいま、ロシアの暴走も加速している。
プーチンはIS(イスラム国)を攻撃するとして、シリア領内での空爆に踏み切った。空爆では、アメリカが支援する反アサド勢力も「テロリスト」として攻撃対象にしている。プーチンは暴虐の独裁者アサドを守るため、軍事力を行使し始めたのである。
このプーチンの決断は、非常に危険だ。アサド政権を潰したいアメリカと、それを守りたいロシアがシリアを舞台に衝突しかねないのだ。もしアサドのシリアが崩壊したら、ロシアは中東での友好国を失ってしまう。だからプーチンは必死なのだ。
では中国とロシアの関係はいいかというと、そうではない。かつて両国は、ウスリー川の中州であるダマンスキー島の領有権をめぐって大規模な軍事衝突を繰り広げた。中国もロシアも、その頃から本質は変わっていない。プーチンも習近平も国際社会のルールを無視して領土拡張・権益拡大に躍起になっている以上、両国間でいつ争いが起きてもおかしくない。
一般には米中ロの3か国は「大国」と考えられているが、いまやアメリカは世界の警察たる力を失い、中国とロシアは暴走している。両者とも国際法や世界の常識を無視して勝手なことをしまくっている。ロシアはクリミアを占拠し、ウクライナに戦争を仕掛けた。中国は南シナ海でとんでもないことをしている。
世界は秩序を失ってしまい、野蛮な連中がうろつき回る「ジャングル」と化したのだ。
※SAPIO2015年12月号