宮藤官九郎脚本のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)は業界から注目を集めて世間に広まった朝ドラだったといわれる。それに対して、現在放送中の『あさが来た』は、一般視聴者から火がついた朝ドラだといえるだろう。あさのお世話係・うめ役の友近(42才)が言う。
「『あさが来た』は脚本を読んだ時、めちゃくちゃ面白くて、絶対人気出るだろうと思ったんです。でも、あまり騒がれず静かにスタートしました。ふたを開けてみれば、ありがたいことにお茶の間のみなさんが見てくれています。最近、ようやく芸人やタレントが“そんな面白いんや”って、騒いできました。遅いわって(笑い)」
友近の言う通り『あさが来た』が絶好調だ。視聴率は放送開始から7週連続20%を超え、11月20日には番組史上最高視聴率25%を記録した。つまり、日本人の4人に1人が見ている計算になる。
幕末から明治・大正を生き抜いた実業家・広岡浅子をモデルにしたヒロインの人生を描いたドラマが、なぜここまで人気なのか。
まずは、なんといっても広岡浅子自身の人生がびっくりぽんなことだろう。上智大学文学部教授の碓井広義さんは言う。
「もともと、誰もが知っている有名人ではありませんが、あまり知られていないことがかえってよかった。“これからどんなすごいことをやるんだろう”という期待感を持ちながら見ることができますね」
実在の広岡浅子とは、どんな女性だったのか。『あさが来た』の原案『小説 土佐堀川』(潮出版社)の著者・古川智映子さんはこう話す。
「ドラマのように子供の頃から自己主張を持っていた女性でした。彼女は、自分の人生を『七転八起』ではなく『九転十起』と言っています。九回転んでも十回立ち上がるような人間でありたい。この言葉に彼女の波瀾万丈な生き方すべてが表れています」
現在ドラマでは、炭坑経営に尽力しているが、史実ではこれからどうなったのか。
「炭坑が成功するまでには、10年以上の歳月がかかりました。その炭坑を政府が高額で買い取って、彼女は全国的に有名になっていったのです」(産経新聞編集委員の石野伸子さん)
持ち前の『九転十起』根性で炭坑ビジネスを成功に導いた浅子は、それから、さまざまな事業に着手していく。
「大隈重信や伊藤博文、渋沢栄一といった、当時の政財界の大物と交流をして、彼女は実業家としてますます成長していきます。その知識と人脈で、日本初の女子大・日本女子大学の設立にかかわりました。また、大同生命保険の創業にも深く携わります。まさにスーパーキャリアウーマンでした」(石野さん)
※女性セブン2015年12月17日号