年末の風物詩であるNHK紅白歌合戦。華やかな舞台の裏側には、楽屋をめぐる意外な「序列」があるという。作家の合田道人氏が解説する。
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1979年に歌手デビューした私は日本歌手協会理事としても長年、「紅白歌合戦」を舞台裏から眺めてきた。
元々、芸能界は礼儀作法に厳しく、先輩後輩の序列を重んじる世界。昔ほど視聴率が取れないとはいえ、日本の一年を締めくくる一大イベントの裏側で、番組スタッフは「楽屋の配分」に細心の注意を払っている。
◆50組なのに個室は7つだけ
紅白はベテランから新人アイドルまで総勢50組が一堂に会す大イベントだが、個室の楽屋はわずか7つ。NHKホールの舞台裏にある1~7番までの楽屋に限られる。
◆大御所でも相部屋になる
芸能界の「看板」といえども紅白では相部屋が基本だ。3~6楽屋では過去に五木ひろしと郷ひろみ、森進一と細川たかしといった豪華なペアが実現した。女性では紅組のリーダー格・和田アキ子と天童よしみ、松田聖子、八代亜紀らが3~6楽屋に入る。
他の楽屋に比べてスペースが広い7楽屋も相部屋だ。豪華な衣裳で紅白をわかせた小林幸子はこの部屋を間仕切りし、石川さゆりと使っていた。
◆タレント司会者は別格
1楽屋と2楽屋は司会役が一人部屋として使用する。2014年に司会を務めた嵐はメンバー5人で1楽屋を使っていた。
美輪明宏や小林旭など超大物級のタレント歌手らが一人で楽屋を利用することもある。2013年の「紅白引退ステージ」で大トリだった北島三郎もこの年は一人で楽屋を使った。
◆演歌とポップスがワイワイ
1~7楽屋に入れない出場者は「大部屋」を楽屋にする。
NHKホールの地下一階には、間仕切りになって鏡台の並ぶ女性用の大部屋がある。ここに坂本冬美、伍代夏子、藤あや子といった演歌界の花形やaiko、西野カナらポップス界の人気者がそろってワイワイ。
同じ地下一階にある男性用の大部屋では、氷川きよしやTOKIOら、他番組なら個室が準備されるレベルの歌手が仲良く肩を並べる。
◆AKBは広いスタジオが楽屋
最近はユニットやグループが台頭し、昔では考えられないほど出場人数が増えたため、ホールに隣接するNHK局内の会議室やラジオの控え室を楽屋とするケースも多い。圧倒的に人数が多いAKB48らのグループは番組収録を行えるほど広いスタジオを全員で使っている。
様々な人間模様が交錯する紅白の舞台裏。今年の年末は楽屋での様子を想像しながら紅白を楽しんではどうだろう。
※SAPIO2016年1月号