「ホワイ ジャパニーズ ピーポー!」日本の文化や言葉に鋭いツッコミを入れて絶叫する芸でブレイク中の厚切りジェイソン(29)。2015年を代表するブレイク芸人の一人でもある彼だが、“日本人ネタ”というだけならこれまで多くの外国人タレントがしてきたことと同じだ。厚切りジェイソンのネタのどこに新鮮味があるのか。
お笑い評論家のラリー遠田さんはこう分析する。
「テレビ東京の『YOUは何しに日本へ?』などの番組が人気になっているように、日本人は『外国人から日本はどう見えているのか』という話が大好きです。『Why Japanese people!?』というのはまさにそれを体現したネタです。外国人観光客が増えている昨今、そうした興味関心はますます高まっていて、ジェイソンさんはそのブームにうまく乗った形でブレイクしたともいえます。
ジェイソンさんの定番ネタといえば、漢字ネタです。たとえば漢字の『一、二、三』と来て、それに続くのがどうして横棒4本ではなく『四』なのか。ここで『Why?』となるわけですが、日本人が同じことをやってもウケないと思います。これは日本語を一から学んでいる外国人だから成り立つネタ。ジェイソンさんも日本語の勉強中に本当にそう思ったんだろうな、というリアルさが面白さにつながっています」
ラリーさんによれば、『Why Japanese people!?』のような決めフレーズがあることで、ネタを連発しても区切りがわかりやすくなり、子供が簡単に真似できるメリットもあるのだという。そのフレーズとともに繰り出される、体を大きく使っての身振り手振りも大きな見どころだ。
「身長186cmの巨体でオーバーアクションをするので、怖いくらいの迫力があります。でも言っていることはくだらない。あんなに大きな人が小さなことに悩んでいるというギャップも面白いですよね。
と、ここまではネタの上での話ですが、ジェイソンさんは芸人以外にIT企業の役員という真面目な顔も持っていて、ツイッターでフォロワーの人生相談にも乗っています。サービス残業や厳しい上下関係など、日本人がなかなか口に出して言えない問題に対して正論をズバズバ言うので、人気になっています。
11月には人生相談をまとめた本も出しました。やはり豊富なビジネス経験があるので、他の外国人タレントよりも言葉に説得力があります。外国人、会社役員、芸人、それぞれの立場をうまく活かしてキャラを作ったと思います」(ラリーさん)
厚切りジェイソンは米ミシガン州立大学に17才で飛び級入学し、同大卒業後はイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の大学院を卒業した頭脳の持ち主。ビジネスパーソンとして今も現役でバリバリ働いているとなれば、これまでの外国人タレントの枠を超えた活躍を見せてくれそうだ。
しかし、懸念材料が全くないというわけでもない。
「これまでちょっと片言ぎみの日本語がいい味を出していましたが、日本語が流暢になるとむしろネタの破壊力が下がってしまう恐れがあります。オーストラリア人で芸人のチャド・マレーンさんも『片言だったときの方がウケていた』と冗談交じりに嘆いていたことがあります(笑い)。日本語がうまくなっても通用するネタを作っていけるかどうかが今後の課題でしょうね」(ラリーさん)
日本語が下手なほうがなぜか日本人ウケする。ジェイソンにとってはそれも「Why!」なのかもしれない。