日韓関係改善の障壁として両国の間に大きく横たわる慰安婦問題。それを解決するにはどうすればよいか。元日本共産党政策委員会・安保外交部長で、新刊『慰安婦問題をこれで終わらせる。』が話題のジャーナリスト・松竹伸幸氏は、「左翼の“妥協”」が必要だと説く。慰安婦問題をいかに解決すべきか、松竹氏に訊いた。(全3回の第1回)
──11月にソウルで開かれた日韓首脳会談では、慰安婦問題について「できるだけ早期の妥結を目指し交渉を加速させる」ことで一致したと伝えられています。松竹さんは、この結果をどう見ましたか。
松竹:基本的にはよかったと思っています。何よりもまず、20年間にわたって両国を引き裂いてきたこの問題について、双方が「解決への意志を持っている」と確認しあえたことは非常に画期的です。
今後出てくるであろう「妥結」の内容そのものは、特に目新しいものではなくこれまでの議論の延長上でしょう。日本側はソウル日本大使館前の「少女像」の撤去を求め、韓国の支援団体はそれに難色を示しているなどの難しい問題も残っています。しかし、そもそも日本には「解決すべき問題などない」という声すらあり、韓国の朴槿惠大統領も、当初は「慰安婦問題についての新たな解決策の提示」がない限り、安倍晋三首相とは会わないという態度でした。それが互いに譲歩して今回の合意にこぎつけたことには、大きな意味があると思います。
──松竹さんは著書の『慰安婦問題をこれで終わらせる。』でも、元慰安婦の方たちの存命中に、この問題に何らかの「解決策」を見出さなくてはならない、と主張されています。しかし、今回の会談でも「解決」ではなくて「妥結」という言葉が使われたように、慰安婦問題については1965年の日韓基本条約で解決済みだというのが日本政府の立場です。松竹さんの言う「解決」とは、どのような状態を指すのでしょうか?
松竹:まず、韓国には「問題は解決していない、納得できない」と感じている元慰安婦の方たちがそれなりの人数存命していて、しかもそれが一定の世論の支持を得ているという現実があります。たしかに、問題を必要以上に煽り立てている人たちがいるのは事実ですが、あまりにも極端な意見というのは、やっぱりそれほど多数の支持を得られないというのが私の考えなんですね。これだけ無視できない数の人が「納得できない」と感じているからには、「誰かが煽っているから」だけではなくて、そこにある程度普遍的な「納得できなさ」があるということだと思うのです。
もちろん、すべての人を納得させる、というのは無理にしても、ある一定の割合の人たちが「納得しました」と公式に言えるような方策は、やはり見つけていかなくてはならないだろうと思っています。