日韓関係改善の障壁として両国の間に大きく横たわる慰安婦問題。それを解決するにはどうすればよいか。元日本共産党政策委員会・安保外交部長で、新刊『慰安婦問題をこれで終わらせる。』が話題のジャーナリスト・松竹伸幸氏は、「左翼の“妥協”」が必要だと説く。慰安婦問題をいかに解決すべきか、松竹氏に訊いた。(全3回の第2回)
──今夏発表された、安倍晋三首相による「戦後70年談話」でも、「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいた」という形で、慰安婦問題への事実上の言及がありました。
松竹:首相がここまで言ったというのは、大きな進歩だと思います。戦後50年の年に出された「村山談話」ですら、慰安婦問題についての言及はなかったわけですから。
── 一方で、元慰安婦の女性たちへの「心からお詫びと反省」を述べた河野談話と異なり、「誰が」女性たちを傷つけたのか、という主語が明確でないなどの批判も出ています。
松竹:たしかに、安倍首相個人としてはあまり触れたくなかった部分だと思いますので、そういう言い方で自分の気持ちと折り合いをつけたのかな、という感じはありますね。ただ、「首相談話」である以上、明確な主語がないからといって「日本には責任がないと言っている」とは読めないでしょう。
それに、河野談話はそもそも首相談話ではないし、比較対象にはなりません。70年談話という重要な局面で事実上の言及をしたというのは、やはり大きなことだと思います。全体的に見ても、少なくとも表面的には日本の多くの人が納得できる内容に落ち着いたと言えるのではないでしょうか。
ただ、植民地支配そのものについては、過ちを認めて謝罪したというふうには読めません。日本が道を誤ったとは言っているが、それは不戦条約などで「戦争状態を違法化する」潮流が生まれてきて以降についてで、それ以前の植民地支配については何も言っていない。「植民地支配」「お詫び」などのキーワードが入るかどうかに注目が集まり、結果としてそのすべてが入ったことで、まるできちんとお詫びをしたかのように受け止めた人もいるようですが、私にはそうは読めませんでした。