流暢な日本語に侘寂のあるコメント、明るく知的なキャラクターからお茶の間でも人気のマーティ・フリードマン(52才)。
発売したアルバムはビルボードや全米チャートの上位を賑わし、グラミー賞にもノミネートされた伝説のスラッシュメタルバンドに参加し、黄金時代を支えたメンバーの1人だ。現在も世界的なギタリストとして活躍し、音楽家としてその名を馳せている。そんな彼が日本の音楽シーンに惚れ込み、日本に移住したのは約10年前。アメリカ人の彼が語る日本は、われわれが忘れかけていた日本の良さを再認識させてくれる。
初来日したのは20年以上前のインディーズ時代に行った世界ツアー。
「アメリカのインディーズだと、微妙な対応をする人たちが大半。しかし日本のスタッフはプロフェッショナルで音楽を演奏する側に対する愛や情熱が伝わってきたのが印象的でした」と語る。
そこから日本の音楽シーンに興味を持ち、未来的であり神秘的な日本の音楽を素晴らしいと感じるようになった。みんなが何てしゃべっているのか興味を持ち、コミュニケーションを取れるように日本語を勉強し始めた。
「ツアーの合間にバス移動、ホテル、楽屋とかで勉強しました。日本に来る前にベーシックな漢字はほとんど覚えました」(マーティ、以下「」内同)。
1990年にアメリカのスラッシュメタルバンドに加入。4枚目のアルバムからギタリストとして参加した。アメリカのみならず、世界的に熱狂的なファンを持つメガバンドの一員に。そんな彼に転機が訪れる。ある時期から世界中で音楽活動をしているにもかかわらず、邦楽ばかり聴いていることに気づく。
「ぼくはボーカリストが人々を魅了する力=魔法を信じているんです。海外アーティストは歌唱力重視で叫んでいる感じしかしないけど、日本の音楽には魔法を感じる。アーティストとして、やりたい音楽があるのは日本しかないと移住を決意したんです」
真面目でスポーツが好きだけどへただった少年時代。そんな彼がハードロックバンドの草分けであるKISSの音楽に出合い、「この人たちがしていることならぼくでもできる」とギターを始めると同時にバンド活動を開始。
「バンドをする前はオタクでダサイ人。バンドを始めて演奏はあまりうまくなかったですけど、一気に人気者になれた。ぼくの音楽を聴いてくれる、それが単純に嬉しかった」。続ければ続けるほどパフォーマンスが上がるし、へたになるわけがない。
バンドと一緒に成長し、常にいいバンドマンでありたいという彼のマインドが、今現在の日本での活躍を支えている。
※女性セブン2015年12月17日号