朝の連続テレビ小説『あさが来た』が絶好調だ。視聴率は放送開始から7週連続20%を超え、11月20日には番組史上最高視聴率25%を記録した。
ヒロインのモデルが魅力的なだけではここまでの人気にはつながらない。『あさが来た』にはヒットの仕掛けがいたるところにちりばめられている。
主人公・あさを演じる波瑠(24才)、そして姉のはつ役の宮崎あおい(30才)のダブルヒロインが、ドラマの見どころのひとつだ。
「もしも、はつが描かれていなかったら、ここまで奥行きのある物語にはならなかったでしょう。あさとはつという、同じ時代を生きながら対照的なふたりを描くことで、見ている側はあさの気持ちになったり、はつの気持ちになったりで、1粒で2度おいしい(笑い)。これは非常に効果的な設定です」(上智大学文学部教授の碓井広義さん)
そのふたりのヒロインを巡る物語は山あり谷ありで実にテンポよく進んでいき、はらはらしたり涙したり。次回が気になって仕方がない。
「1回15分の放送の中に、泣けたりドキドキしたりする山場、“次はどうなるの?”というシーンが毎回入っています。最近、発見したんですが、何か大変なことが起きる直前にあさは必ず目を開きます。その開き具合で、どれくらい大変なことが起こるのかわかります。そうした細かい演出は、視聴者も見ていて楽しいですよね」(コラムニストのペリー荻野さん)
そうした物語を私たちがワクワクドキドキ楽しめるのは、時代と場所が絶妙だから。ペリーさんが続ける。
「江戸時代の関西は商人、庶民の街です。庶民目線で動乱の時代をたくましく生きようとする商人には、たとえ、あさがお金持ちでも共感しやすい。これが現代劇だと、自分とヒロインを重ねすぎて疲れてしまう。江戸時代なら現代とは別の世界なので、安心してドラマを楽しめます。江戸時代の関西は、ほどよい舞台設定なのです」
大ヒットする朝ドラには、視聴者は共通してこんな思いを抱くという。
「私たちはみんな、登場人物の親戚になるんです。親戚のように彼女たちの喜怒哀楽を見守り、人生が心配になって仕方ない。そうでないと半年間も見られません。今や全国には、はつやあさの親戚がたくさんいます」(ペリーさん)
モデルの広岡浅子の波瀾万丈な人生に加え、スタッフや出演者の創意工夫で作り上げている『あさが来た』もそんな朝ドラといえるだろう。明日のあさが楽しみだ!
※女性セブン2015年12月17日号