家族の介護のために仕事を辞めざるをえない介護離職者は、年間10万人。仕事を続けながら介護を続ける人はもっと多く、約300万人いるといわれている。一方で、認可保育所に入れない待機児童数は2万3167人(今年4月時点)。出産・子育ての不安が大きいことが少子化につながっているとされる。こうした介護の人手不足、少子化の両問題に対する政策として安倍政権が掲げているのが「三世代同居」だ。
これは、子を育てる親たちがその親世代と一緒に暮らすことを推奨する政策で、増築や購入の際に上限50万~100万円程度の補助金を出すなど、地方ではすでに独自の政策を行っている自治体もある。今回政府は、同居に必要な住まいの改修を行った場合、所得税や相続税を減額する方向で検討している。
そして、この三世代同居は、安倍政権の目玉政策「一億総活躍社会の実現」の1つでもある。
「10月に発足した第三次安倍内閣の肝入り政策が“一億総活躍”。特命大臣を任命して、菊池桃子を看板に大々的にやっていますが、はっきりいって何をやりたいのかイマイチわからない。
“希望を生み出す強い経済”“安心につながる社会保障”など抽象的な言葉ばかりが並び、実現性に乏しいプランばかり。自民党の中からも、“担当大臣にならなくてよかった”という声が聞こえてくるほどです」(大手新聞紙政治部記者)
それでも、このニュースを知って、「税が優遇されるなら同居を前向きに考えたい」と話すのは、佐賀県に住む会社員女性(50才)だ。
「娘が結婚して、孫と私と三世代で一緒に住めればいいですね。私も孫の面倒を見てあげられるし、年を取っても娘が一緒だと安心ですよ」
不動産・住宅情報の専門サイト「オウチーノ」の調査(11月12~14日の3日間、首都圏在住20~49才既婚子持ち男女717人対象)によると、36.5%の人が三世代同居を希望しているという。
一億総活躍国民会議有識者委員でジャーナリストの白河桃子さんは、三世代同居を「意外にも現実的な選択」と言う。
「正直、こういう政策は批判されると思っていたけど、意外と女性から歓迎されています。というのも、女性が出産後も仕事を続けていくためには誰かのサポートが必要なんです。地方では三世代同居をしている家族は多いですし、子育てと仕事をしている女性に聞くと、猫の手でも借りたいという状況です。
だからこそ、実家から遠方に住んでいる人など、三世代同居をしたくてもできないかたのために、交通費支援をしたり、育児の外部サポートサービスを利用しやすくするといったことをセットで行う必要はあると思います」
※女性セブン2015年12月17日号