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介護と少子化問題解決目指す三世代同居 現状に合うか疑問も

 安倍首相が9月24日に発表した新たな三本の矢。そのひとつに「希望出生率1.8」がある。また、介護の人手不足、少子化の両問題に対する政策として安倍政権が掲げているのが「三世代同居」だ。

 少子化対策と聞いて、素朴な疑問を感じたのは東京都の女性公務員(45才)だ。

「今住んでいるマンション、お隣のご夫婦は三世代同居。よちよち歩きの子供と旦那さんのご両親が一緒に住んでいます。この前、奥さんが『生活スタイルが全然違うし、部屋が狭いので、同居は大変』と、愚痴をもらしていました。狭い家に親と一緒に住んで本当に子づくりってできるんですかね?(笑い)」

 一緒に住んでしまったがために、介護をひとりで抱え込んで深刻化、その結果、極端な事例ながら、介護殺人につながることだってある。

「結局、子供はジジとババにみてもらって働け。その代わり、ジジ・ババが倒れたら、彼らの面倒もみろ、ということですよね。それって家に全部押しつけられるってことになりませんか?

 介護疲れしていても、同居していればヘルパーさんにはなんとなく頼みづらい。それに孫ができたら、ジジ・ババが孫育てに口出しする機会も当然増えてくると思うんです…。いろいろモメ事が増えそうで嫌だなぁ」(神奈川県・40才主婦)

 三世代同居の政策説明には、「育児支援強化」「少子化対策」「介護費抑制」などが挙げられている。しかし、同居すれば本当に子供を育てやすくなって、高齢者施設の入居を待つ待機老人が減るのだろうか?

 介護問題に詳しい健康社会学者の河合薫さんも疑問を投げかける。それは、果たして現代社会に合っているのか、と。

「三世代同居は、一昔前の家族スタイルです。そのスタイルが保たれなくなったのは、社会が変わり、女性の働き方や家族のあり方が変わったから。それなのに昔の状態に戻せというのは、そもそも社会に適合していません」

 かつて三世代同居、いわゆる二世帯住宅が主流だった頃は、結婚したら仕事を辞め、家のなかで子育てをして夫を支えるという役割が女性に求められた。しかし、1986年に男女雇用機会均等法が成立し、働く女性が増えたことで、家族のあり方は変わった。もちろん、今も三世代同居をしている家族はいるが、その実態は変化している。

「今は同居といっても、女性の実親と一緒に住んで助けてもらうという形です。昔のように、お姑さんとの同居、じゃないんです」(一億総活躍国民会議有識者委員でジャーナリストの白河桃子さん)

 娘と同居する側にも同様の思いがあり、多くの女性は、“実の娘との同居”には前向きだが、義理の娘との同居にはそれほど積極的ではない。

 2人の男の子の母で、神戸市在住の派遣社員(38才)は、1か月前に義母と大げんかしてマンションの合鍵を取り上げた。

「結婚して夫の親と近居しましたが、孫ができたら姑が毎日家に来るようになったんです。私も早く職場復帰したいから、甘えて子供を見てもらっていたら、次第に育児だけでなく、家事にまで口出しするようになって、姑の思い通りにできない私のことばかりか、親の悪口まで言われ、キレてしまいました。実家は電車で40分と離れているので、自分が頑張るしかありません。それでもあのお義母さんには頼りたくないんです」

 近所にいるだけでもトラブルの種はつきないのに、同居なんてすれば家族関係を円滑に築くどころか、崩壊しかねない。三世代同居はそんな危険をはらんでいる。

※女性セブン2015年12月17日号

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