自民党内で来年夏の衆院選と参院選の同日選挙論が急速に広がっている。自民党が幹事長会談で野党に通常国会の召集日を1月4日にしたいと通告し、「同日選」は一気に真実味を帯びた。
というのも、国会日程の絡みで同日選が可能な日付は限られるており、数少ないチャンスの一つが7月10日。その日に同日選を実施するためには通常国会を正月の1月4日に召集し、安倍晋三・首相は会期末の6月1日にピンポイントで衆院を解散しなければならないからだ。
安倍首相の決断に大きな影響を与えたとされるのが、大阪府知事選と市長選のダブル選挙(11月22日)の情勢だった。実は、トルコ訪問中の首相には1週間後の大阪ダブル選挙で官邸がひそかに応援していた「おおさか維新」が圧勝するとの見通しが伝えられていたという。自民党選対幹部が明かす。
「投票1週間前の新聞の合同世論調査(11月14~15日)でおおさか維新の候補が自民党候補に20ポイント近い大差をつけていた。これを見て谷垣執行部は完全にあきらめたし、官邸は数字を選対より早くつかんで総理に報告していた」
結果は世論調査通り知事選、市長選ともにおおさか維新の圧勝となった。では、なぜ、自民敗北が同日選という安倍首相の判断につながったのか。ジャーナリストの森功氏が指摘する。
「安倍首相にとっておおさか維新の勝利で橋下徹氏が政治的に生き残ったことが大きな意味を持つ。安保法制で落ち込んだ内閣支持率はいまや40%台まで回復、一部の調査では50%に乗った。支持率の上では衆参同日選を打つ環境は整ってきたが、安倍政権が一番嫌なのは野党が反自民でまとまることだ。
橋下氏は野党の選挙共闘には同調しないからおおさか維新の存在は野党連合への強烈な牽制になるし、大阪でこれだけ圧勝したのだから国政でも一定の勢力を得て、選挙後は安倍政権と連携するという予測が立つ。その勢力を大きく見せるために必要なのが橋下氏の出馬です。
橋下氏は参院選には出馬しないだろうが、衆参同日選挙になれば衆院選に出馬する可能性が高い。周囲もそれを期待している。同日選は安倍首相が橋下カードを切るためにも必要な舞台になる」
事実、自民党内で衆参同日選論が急浮上したのは大阪ダブル選の直後だ。その先兵役となった佐藤勉・国対委員長は橋下氏とパイプが太い菅義偉・官房長官の側近として知られ、「事前に菅さんの了解を得て同日選をぶち上げた」といわれる。最初から安倍官邸主導の「同日選」宣言だったとみていい。
※週刊ポスト2015年12月18日号