年の瀬を迎えたこの時期、年末年始の「孫育て」に戦々恐々とするシニア層が増えているという。神奈川県在住の横井めぐみさん(仮名・66才)は「お正月が近づくと憂鬱なんです…」と打ち明ける。
「車で30分の距離に暮らす息子夫婦には4才の男の子と1才の女の子がいます。下の子の具合が悪くなると男の子を預かるのですが、とにかくやんちゃ。一緒にテレビを見ていると“ここはどこ?”“あれ何?”と質問攻めで、答えを考えているうちに次の質問が来ますし、“じぃじ、お散歩連れてって”と膝を痛めている夫を連れ回す。孫はかわいいですが、ほんの数日間、預かっただけで夫婦ともにヘトヘトになります。お正月には下の子も連れて泊まりに来る予定で、うれしい半面、ちょっと心配です…」
「孫育て」とは文字通り、祖父母世代が孫の面倒を見ること。共働きが当たり前になり、子育て中の母親が実家近くに移り住むなど、祖父母の育児サポートが一般的になった2000年頃出現した造語だ。評論家の田原総一朗氏(81才)が孫の話を新聞に寄稿した際、「孫育て」というワードを使って広まったという。
内閣府が全国の20~79才の男女3000人に行った調査(2013年)で、「子供が小学校に入るまで祖父母が育児の助けをすることが望ましいか」と問うと、「とてもそう思う」「ややそう思う」が8割近くを占めた。今や国民の大多数が孫育てを望んでいるのだ。
しかしその一方で、冒頭の横井さんのように「孫疲れ」を訴える声も増えつつある。『団塊世代の孫育てのススメ』(中央法規出版)の著者で家族問題評論家の宮本まき子さんは、「孫疲れ」においてシニア層がいちばん悩んでいるのが「体力面」だと指摘する。
「昔と比べて今は子供をつくるのが10年以上遅く、孫が生まれた時、すでに60代という祖父母が多い。自分らの親世代のように頑張って孫育てしようとしても、体力が追いつかない一方、頼まれるとむげに断れず、孫の世話で疲れ果てて体を壊し、ドクターストップになる人もいます」
都内在住の白井まさ美さん(69才)もそんなひとり。
「ちょこまかと活発に動き回る5才の孫の面倒を見ていて、腰椎すべり症になりました。今は遊びに来た孫が帰るたび、マッサージや鍼で疲れた体をメンテナンスします。私の周囲には孫疲れで不整脈が出たり、高血圧になった人もいます」
かわいい孫が祖父母の不健康を招いているのだ。
※女性セブン2015年12月24日号