初の本格小説『火花』(文藝春秋)で芥川賞を受賞したピース又吉直樹(35才)が下半期はバラエティーに引っ張りだこだったが、もうひとり、テレビで大活躍中の作家がいる。又吉と同時に『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)で芥川賞を受賞した羽田圭介氏(30才)である。受賞時は又吉にばかり注目が集まっていたが、今やブレイクとも言える活躍ぶりを見せるのは羽田氏のほうだ。気鋭の若手作家がこんなにもテレビから求められる理由とは? テレビ解説者の木村隆志さんがその秘密に迫る。
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羽田さんの活躍にはいくつかの理由が考えられますが、最たるものは「空気を読まずに本音を話す」というスタンス。「サイン本は書店が返品できない」「全部金のためにやっている」などの欲を隠さず、密着撮影では「4~5日張りついて10数分で終わりかよ」発言を曲解されたウェブニュースの記者には「読解力ねえな」と毒づき、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)では原稿料やテレビ出演料をバラすなど、迷いのないコメントは清々しいくらいです。
今年はマツコ・デラックスさんがMCとしての地位を固めたほか、松岡修造さん、蛭子能収さんら、空気を読まずに本音を話す人が活躍しました。スタッフ側も、「ただ面白いから」ではなく、「そういう人を見たい」という視聴者ニーズを前提にキャスティングしていた気がします。
すでに多くの視聴者は、芸人を中心とした“お約束”や、取ってつけたようなキャラクター設定に辟易としているところがあります。空気を読み合いながら台本通りに進む番組には魅力を感じにくくなっているため、羽田さんのような存在は強烈なスパイス。事実、羽田さんが発言したあと、共演者たちはポカンとしていますし、大物芸人ですらツッコミもフォローも入れられないというシーンが目立ちます。