プロ野球は現在契約更改の季節だ。選手にとっては試合より緊張する瞬間だが、密室ではどんな交渉が行なわれているのか。年俸の決定には、さまざま“大人の事情”がからむ。
「金満球団」と呼ばれる球団もあれば、そうでない球団があるように、球団の総年俸にも予算がある。今季の山田哲人(ヤクルト)や秋山翔吾(西武)のように大ブレイクして大幅増の選手が出た場合、他の選手が割を食うことも考えられる。パ球団に所属していたある選手はこう語る。
「優勝した年、大幅アップすると思っていたが、スター選手の上がり方が異常だったためか、自分は今ひとつだった。特定の選手との間に太い“線引き”をされていると感じた」
阪神で球団社長を務めた野崎勝義氏が語る。
「球団事情で違うかもしれませんが、少なくとも阪神では、活躍した選手の年俸の原資を他の選手の年俸から捻出することは考えませんでした。こういう情報は必ずチームに伝わってしまい、不協和音が生じる」
確かに前出の選手のチームは翌年Bクラスに沈んだ。
「選手がブレイクすればその分、観客動員やグッズ売り上げなどで営業収入面に確実にプラスが出ている。そうした別枠から工面するのがフロントの腕の見せ所です」(前出・野崎氏)
そして球団は選手によって交渉の方法を変える。
「二軍選手は交渉の余地はありません。球団の管理部長が1人で応対し、金額提示して印鑑を押させる。保留したら戦力外です。中堅でも一軍でない選手はほとんど同じ待遇ですね。球団本部長クラスが出てくるのは準レギュラー以上で、このあたりでようやく交渉が可能になります。大物選手の場合は事前に予備交渉をすることが多い」(同前)
なぜなら大物には交渉で最も難しい事項が生じやすいからだ。大幅減俸である。
減俸は交渉が難しい。特に野球協約の減額制限(元の年俸が1億円超の場合は最大40%まで、1億円以下の場合は25%まで。超過提示された選手は自由契約になる権利がある)以上の減俸を提示された選手との交渉は、大体一悶着起きるという。
※週刊ポスト2015年12月18日号