国内

元ヤンキー とび職経てUCバークレー進学するまでの道のり

元ヤンからUCバークレー卒業を果たした鈴木琢也さん(29才)

「本当にバークレー入れちゃったらどうしよう、おれ?」

「お前じゃ無理だから、考える心配ない。安心しろ」

 父に大きな夢を語っていた鈴木琢也さん(29才)は当時24才。小学校で仲間外れにされて中学で不良の道に走り、高校卒業後にとび職に就いた彼が、名門・カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)の門を叩くことが現実になると、この時、誰が思っただろう。

 UCバークレーとは、世界大学ランキングで常にトップ10に入るアメリカの名門校。卒業生にはソフトバンクの孫正義氏や元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏ら名士の名前が並ぶ。ヤンキーから名門大学へ。それは家族が長い道のりを経て到達した夢物語だった。

 神奈川県川崎市で生まれた琢也さんは父・敏博さん(64才)、母・博子さん(57才)、3才年上の姉の4人家族。途中、両親には離婚危機もあった。

 小学校の頃に周囲から浮いてしまった琢也さんが、ようやく自分の場所を見つけたのは中学時代。地元で知られるワル中学に入り、不良の仕草をマネすると、初めて仲間を作ることができた。

 そうした中学時代であったから、ほとんど勉強などはしていなかった。琢也さんは地元の県立高校に辛うじて進学する。そこは、英語の授業がアルファベットの練習から始まる学校だった。

 高校卒業後、琢也さんは「稼げそうだから」と先輩の紹介でとび職に就く。肉体労働への世の偏見に腹が立ったが、がむしゃらに働き、収入が40万円を超える月もあった。

 そんなある時、父が転機をもたらす。敏博さんが仕事(外資系生命保険会社営業マン)で大きな成果をあげ、ハワイで表彰式が開かれることになったのだった。

 しぶしぶ参加した表彰式で、琢也さんは大勢の人から「きみのお父さんは本当にすごい人なんだよ」と声をかけられた。一時は苦境に陥った父だが、コツコツと努力と勉強を重ね、仕事を通じて多くの人に称賛されるまでになっていたのだ。

「ぼくが“家族が冷たい”とグレている間に、父がどん底から這い上がり、母もそれをサポートしていたと知り、自分は何ひとつわかってないと思い知らされました。ぼくも父のように情熱を持って働きたいと思い、転職を決めました」(琢也さん)

 転職するといっても、知り合いに働き口を紹介してもらうつもりはなく、本気で勉強して全く違う職種を選択したかった。そこで、まずは資格を取るために専門学校に入学した。が、基礎となる学力的な土台が全くなかったため、なかなか前へ進めなかった。

 新聞を開いても、「促す」「為替」が読めない。漢字が読めないので辞書を引くこともできない。悩んだ末、部首索引のできる電子辞書を買い、漢字を覚えていった。

 それでも2年間腐ることなく、なんとか勉強を続けて、情報処理の国家資格を取り、IT企業の営業職に就いた。

◆Somethingの意味がわからないままアメリカへ

 その年9月、リーマンショックが発生し、先行きに不安を感じた琢也さんは、「学歴」よりも「学ぶ力」を身につけようと留学を決意。アメリカの大学は2年制の短期大学(コミュニティーカレッジ)で必要な成績を取得すれば、4年制大学に3年次から編入できる。この制度を利用して、どうせなら「てっぺん」のUCバークレーに挑戦することにした。

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト