平均寿命100才時代に近づく今、孫ができても、人生はその先20年30年と続く。老後の習いごとや友人との交流を楽しむシニアが多いなか、「孫のせいで老後の時間がなくなった」と嘆く声も多い。
都内在住の太田友代さん(仮名・72才)は、娘が京都で子育てをしている。早朝6時に電話が鳴ると、太田さんは「またか…」とうんざりする。
「間違いなく、娘からの“子供に熱が出た”という知らせです。私はハンドバッグだけ抱えて家を飛び出し、6時40分くらいの新幹線で東京駅から京都駅に向かいます。8時過ぎに娘の自宅で孫を受け取り、娘は会社に直行。私は小児科に飛び込み、孫の熱が収まるまで3日ほど娘宅に泊まり込みます。婿も忙しく、ほかに頼る身内もないとはいえ、この間の私の予定は全滅になり、楽しみにしていたお芝居を何度も見逃しました。本当に 『朝6時の恐怖』です」
太田さんのように「自己犠牲」を強いられるケースも多い『団塊世代の孫育てのススメ』(中央法規出版)の著者で家族問題評論家の宮本まき子さんは言う。
「子供夫婦が共働きで、“孫が急病のSOS”がくると断れず、損を覚悟で旅行や演劇をキャンセルして駆けつけたり、自分の仕事の欠勤が続いてやめざるをえなかったりというかたも結構います。本来楽しめるはずの老後ライフが孫の時間に食い潰されている。“おばあちゃんの育休ってないのかしら”という相談は本当に多い」
孫育ては「体力」「金銭」「時間」を犠牲にする面があるが、シニア層の本当の不満は「子供の態度」にある、と宮本さんは指摘する。
「こんなに自分の時間やお金をすり減らしているのに、さして感謝されないということ。“孫だからやって当然”という態度をされると腹が立つし、虚しくなります。それが大きなストレスになる」
続けて、孫育てのコツをNPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長が教えてくれた。
「孫育てで時に必要なのは『断る勇気』です。祖父母の無理がたたって病気になれば、みんなが不幸になってしまう。それを避けるには、日頃から子供世代とコミュニケーションを取り、家族だからこそ言いたいことを伝えておきましょう。
子育ての主役はあくまでパパとママ。祖父母は適度な距離感を保ち、パパとママから頼られすぎないことが大切です」
※女性セブン2015年11月17日号