表のサイバー問題、裏の令完成(れいかんせい)氏──。米中のインテリジェンスに通じる専門家は、こんなキーワードで昨今の両国の関係を読み解いている。
まず表のサイバー問題とは、中国政府の支援する国有企業が米企業の知的財産を盗み、それによって年間数千億円の被害が発生してきたことを指す。これまで幾度も米国政府はサイバー攻撃をやめるよう、申し入れてきたが中国政府は関与そのものを否定していた。
それが9月末の米中首脳会談で一転。企業の知的財産などを盗むサイバー攻撃を両政府が支援しないことで両国政府は合意した。一体何があったのか?
そこで裏の令完成氏の登場だ。同氏は、令計画・元党中央弁公庁主任の実弟である。国営新華社通信の記者から実業家に転じた。兄・令計画氏は胡錦濤前国家主席の腹心だったが、習近平政権発足後に失脚し、2015年7月、党の機密情報を不正に入手したかどで党籍を剥奪される。粛清劇は、習近平国家主席が展開する腐敗撲滅運動の象徴となった。
追及の手は親族にも及ぶ。党の重役に就いていた親族たちは次々と塀の内側に落ちた。一族の危機のなか、令完成氏は起死回生の手に出る。兄・令計画氏の持つ機密情報を譲り受け、米国に渡った。習近平国家主席にとって最悪の事態である。
「令計画が就いていた中央弁公庁主任は日本でいえば官房長官か、それ以上のポストです。胡錦濤にあげていた情報はすべて令計画を経由していた。機密情報の中には習近平の足下を揺るがすスキャンダルもあると囁かれています」(在中国日本人記者)
米政府関係者によれば、機密情報は2700点にも及ぶという。情報が米国に渡ったら習近平政権は崩壊しかねない。中国政府は情報機関関係者を米国に放ち、行方を捜した。