【マンガ紹介】『よつばと!』13巻/あずまきよひこ/KADOKAWA/648円
翻訳家の「とーちゃん」と暮らす5才児「よつば」の普通の日々を描いた『よつばと!』。よつばのあざとく見えない絶妙なかわいらしさが見所ですが、周辺の大人たちこそが本作のキモ。「とーちゃん」(実の父に非ず)をはじめ、その友人のジャンボ、お隣の三姉妹の長女とその母(次女と三女はまだ子供)など、時に叱り、時にほめ、あとは適当にほったらかし(これ大事)…とよつばをきっちり「子供扱い」できる、大人らしい大人たちが揃っているんです。
そんな大人軍団に、2年8か月ぶりの最新巻で加わったのが、突然訪ねて来た「ばーちゃん」。この人が、かっこよすぎる! 新聞を毎日ポストから取ってくるというよつばを〈毎日続けてるのはとっても偉いことやで よつば〉とほめ、〈本気で〉掃除することの楽しさを教え、鳥の名前を教え、一緒にパンを焼き、ズボンの穴にアップリケをし、よつばが普通の毎日を健やかに過ごすために必要なことを次々に教えます。
帰る日、〈よつば これからもっといいこになるから めがはなせないよ!〉と言うなど引き留めようと必死なよつばをしっかり受け止めつつ、諭します(ばーちゃんこそさみしいはずなのに!)。ラスト、無音で見送るコマが3ページ続いた後、よつばは〈あーあ/かえっちゃった!〉〈あーあ!〉と嘆きはするもののどこかふっきれた様子。ばーちゃんは最後に「小さな別れ」を身をもって教え、鮮やかに去ったのでした。くーっ、かっこいい!!
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2015年12月24日号