中国の重慶市の元トップで、2012年に失脚した薄熙来・元党政治局員のパトロン的な役割を果たした実業家、徐明氏(44)が12月4日、湖北省武漢市の刑務所で死去したと報じられた。徐氏の死に対して、ネット上では「薄熙来らの秘密を握っていただけに、極めて奇怪だ」「あまりにもでき過ぎ」「温家宝元首相の家族とも親しい関係だっただけに、疑わしい死に方」などと、謎の不審死に強い疑問を抱く書き込みが多数寄せられている。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、徐氏は4日朝、起き掛けにトイレに行った際、急に倒れて、そのまま帰らぬ人となったという。刑務所関係者はすぐに遺体を荼毘に付した後、遺骨を大連市に住む親族の届けるという手回しの良さだった。当局は徐氏の家族ら関係者に対し、「死因は心筋梗塞」と説明しているという。
この「徐氏死亡」の報は6日、香港や台湾のメディアにもたらされたが、徐氏がオーナーだった「実徳集団」の関係者は「徐氏が心臓に持病を抱えていたことは聞いたことがない。それに、あまりにも荼毘に付すのが早すぎるのではないか」と語っている。
徐氏は薄氏が大連市長を務めていた1990年代、大連を拠点に「実徳集団」を興し、地元政府の支援を受けて不動産、銀行、保険などを多角経営したほか、サッカー好きの薄氏の意向を汲んで、プロサッカーチーム「大連実徳」を結成し、数年で強豪チームに育て上げた。
2005年にはフォーブスの長者番付で、80億元(1元=20円)もの資産を有し、中国で8位の富豪にランクインされるほどだった。
北京紙「京華時報」によると、薄氏のパトロン兼金庫番の役割を果たし、薄氏のために美女を飛行機で運ぶなどの便宜を図るなど、汚れ役を引き受けていた。しかし、薄氏が巨額汚職の容疑などで逮捕されると、裁判で薄氏に20万元のわいろを贈ったなどと証言し、法廷で薄氏と罵り合いを演じた。
結局、薄氏は猶予付き死刑判決だったが、徐氏は懲役4年の実刑判決を受けた。来年9月には刑期満了で出所するはずだった。
中国の民主化運動に取り組む北京大学法学部教授の賀衛方氏は「薄熙来の親しい友人であるがゆえに、政商として犠牲になったではないか。突然の死はあまりにも奇怪至極としか言いようがない」などと、中国版ツイッターともいわれる微薄(ウェイボ)にコメントを書き込んでいる。
また、当件を報じた中国ニュースサイト・博訊の記事には「あまりにも不自然な監獄死。共産党のやることは、あまりにもむごい」との意見も書き込まれており、当局発表である「病死」を信じる人はあまりいないようだ。