卑劣なテロ行為も「反日」という目的の元では正当化され、むしろ賞賛される。我々日本人にはまったく理解できないが、それが韓国という国の考え方である。事実、「日本の軍国主義の象徴」に爆破物を仕掛けた容疑者に対しても、韓国国内ではその行為を支持する声が広がっている。隣国では再び、「愛国人士」という名の反日テロリストが生まれようとしている。
11月23日に起きた、靖国神社南門付近の男子トイレ内で爆発音がした事件は、発生から約2週間経った12月9日朝、韓国籍の全昶漢(チョン・チャンハン)容疑者が建造物侵入容疑で逮捕された。
容疑者に対して韓国のネットでは過去の独立義士になぞらえて賞賛する書き込みも出ている。安重根、尹奉吉、李奉昌──3人は韓国では「独立三義士」として英雄視されている人物である。
安重根は1909年10月に満州のハルビン駅構内で伊藤博文を暗殺した。尹奉吉は上海で抗日武装組織韓人愛国団に参加、1932年4月29日の天長節(天皇誕生日)に上海の日本人街で行なわれていた祝賀式典会場に手榴弾を投げ込み、日本軍人ら要人を死傷させる「上海天長節爆弾事件」を起こしている。李奉昌も同じく抗日武装組織韓人愛国団の団員で、1932年1月、東京で昭和天皇暗殺未遂事件(桜田門事件)を起こし大逆罪で死刑となった。
国際常識から見れば、彼らはテロリスト以外の何者でもない。だが韓国では、「反日」という大義名分があれば許されてきた歴史がある。それは戦後も同じだ。
例えば「金嬉老事件」だ。1968年2月、金嬉老が静岡市内のクラブで未成年1人を含む暴力団員2人を射殺。その後、銃やダイナマイトで武装し、人質をとって籠城した。その間、以前に目撃したと主張する警察官の「在日韓国人・朝鮮人への差別発言を撤回する」ことを要求したことが韓国マスコミで大きく報じられ、「差別と戦った民族の英雄」として扱われた。
最近では今年3月、ソウルでアメリカの駐韓大使マーク・リッパート氏が重傷を負った事件が記憶に新しい。犯人の金基宗は2010年7月に当時の日本の駐韓大使・重家俊範氏に投石し、逮捕された前科があった。この時韓国では「よくやった」という声が巻き起こり、その世論に押されるように、裁判所は懲役2年、執行猶予3年という判決を下した。
そういった「反日」を後押しする風潮が、今回の事件を起こすきっかけのひとつとなったのかもしれない。
※週刊ポスト2015年12月25日号