一年を締めくくるNHK紅白歌合戦。今年もその日が近づいているが、「目玉不足」との声が相次いだ出演者の発表後、ここまであまり良い話題が見つからないでいる。去年の今頃は『アナと雪の女王』の演出はどうなるのかという話題で持ちきりだったはずだが、今年はコレといったものがない。紅白はもはやオワコンなのか――。
音楽評論家の富澤一誠さんは、今年の紅白がいまいち盛り上がっていない理由について次のように解説する。
「紅白といえば毎年何かを打ち出すものですが、今年は何がメーンなのか、どういう方向に持っていきたいのかが見えてきません。今年を代表するヒット曲がなかったということが大きな要因なのですが、それをカバーするようなアイディアもこれまでのところ出てきていません」(富澤さん、以下同)
目玉不足と言われる出演者のラインナップについてはどうか。
「演歌が減ってJポップが増えるんじゃないかと思っていましたが、大きくは変わらなかったようですね。三山ひろしさん、山内惠介さんといった若手演歌歌手が選ばれた点は新しさがあってよかったと思いますが、どうなるか注目されていた森進一さんや和田アキ子さんが今年も入っているので、代わり映えしない顔ぶれという印象は拭えません。
小林幸子さんやX JAPANなどの復活組も驚くべき話ではないし、初出場のBUMP OF CHICKENやレベッカ、Superflyもなぜ今なのか。出てもらうのが遅かったんじゃないかと思います」
今年の紅白に出演しないアーティストの中で、富澤さんが「今年の紅白に出てもよかった」といえるアーティストは、DREAMS COME TRUEだという。7月に発売した『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』は100万枚に届く勢いでロングヒットしており、知名度と話題性は申し分なし。すでに出場回数15回を誇る人気グループだが、ヒット曲のない今年こそドリカムパワーに頼るべきだったのかもしれない。
出演者をめぐる世間とのズレは今に始まった話ではないが、そうなってしまう要因は時代の変化にあると富澤さんは指摘する。
「かつて紅白に出場するということは、歌手としてのステータスを高めるものでもありました。今でも演歌歌手にとって大きな目標であることに変わりありませんが、Jポップのアーティストにとってはそうではなくなっています。出演をきっかけに羽ばたくということもなくなった。出演者の価値観が変わってきている中で、今の紅白に興味を持って観ている人がどれだけいるかというところから考えないと、本当に『役目は終わった』となりかねません」
紅白に落選したももいろクローバーZは“紅白卒業宣言”をして、年越しライブを開催することになった。このようなアーティストが増えると、そのうちどの家も紅白にチャンネルを合わせなくなるかもしれない。