2015年の流行語大賞は、「爆買い」と「トリプルスリー」が受賞。この結果には、毎回いろいろな意見が寄せられるが、審査員はどう考えているのだろうか。「ユーキャン新語・流行語大賞2015」の審査員を務めた女優の室井滋さんと、漫画家のやくみつるさんが、今年の流行語大賞の裏側を語り合った。
室井:やくさんはどんな言葉に注目されてましたか?
やく:やっぱり「爆買い」、それと「ドローン」「白紙撤回」。
室井:私も「爆買い」は大本命。単なる流行に留まらずこれからも残っていく言葉だと思う。あとは地元が富山なので「北陸新幹線」も推したんですけれども、残念だったな。でもいちばん惜しかったのは、「ましゃロス(福山ロス)」ですよね。
やく:ウルトラ惜しかった。あの鳥越俊太郎さんが、ことのほか強く推されていましたから。
室井:福山雅治さんに限らず今年は芸能人の結婚がたくさん話題になったから、それを象徴する言葉としてね。もし授賞式に福山さんが来てくださったら、きっとすごく盛り上がったでしょうし。でも交渉が難しかったのかなあ。ファンの中には本当にショックで苦しくて会社に行けない、というかたもいらっしゃるとか。
やく:単純な点数制ではなく、社会的な影響はどうだったかなど、トータルにおもんぱかった上での賞ですから。
室井:そういえばオウム真理教の一連の事件が起きた年には「サティアン」や「ポア」といった関連語がものすごく流布したけど、候補の段階から一切排除したらしいですね。
やく:だって、あれが大賞をとってしまったらシャレにならないですよ。それが主催する側の見識というものです。「ましゃロス」にもそういう配慮が働いたのかもしれない。
室井:今年は政治の言葉もすごく多かったから、候補の50語が発表された段階では、政治色が強すぎるとか思想的に偏っているとか、ネットでは批判もされてたみたいですね。選ぶ方としては自分が政治に対してどう思うかはおいといて、多くの人の記憶に残る言葉を選ぼうというスタンスでやってますけれども。
やく:鳥越さんや姜尚中さんのように、審査員の中には日頃から政治的立場を明らかにされているかたもいらっしゃるので、勘ぐる人がいるんだろうなとは思いますよ。でも、今年は政権側とそれに反対する側、双方が強い言葉をガンガン出してくるという状況でしたから、候補語も必然的にそうなるでしょう。私みたいな漫画家にとっては、政治バブル。こんな無茶しいの総理がいてくれて、それに抗う人たちもいてくれるおかげで、もう描くネタが多すぎて。本来こんなことがあってはいけないんですけれども、ほんと「ごちそうさまでした」って感じ。
※女性セブン2016年1月1日号