中国の元国家主席、江沢民氏が1993年12月、現役の主席時代、毛沢東主席の生誕100周年記念式典で隣り合わせた毛沢東の直系の孫である毛新宇・中国軍事科学院副部長(少将)に対して、「どうしてそんなに太っているのか。もっと痩せるよう注意しなさい」と毛新宇氏を一喝していたことが分かった。中国誌「中華児女」が報じた。
当時の最高指導者とはいえ、江氏が中国の「建国の父」と崇め奉られている毛沢東主席の孫をつかまえて、「痩せろ」と一喝するのは異例だが、江氏が新宇氏の健康を気遣うあまり、このような言葉が出たようで、逆に好意的に受け止められたようだ。
毛新宇氏は毛沢東の長男、毛岸青氏と邵華さんとの間の子供。毛岸青氏は朝鮮戦争(1950年6月25日 ~1953年7月27日休戦)で戦死しており、2人の間に他の子供はいない。また、毛姓を名乗る毛沢東の直系の子孫は新宇氏のみだ。
2010年8月に史上最年少で少将の位を与えられると、「異例の出世」と報じられるほどだった。これに対して、新宇氏は「もちろんだ。それは客観的事実で、私も否定しない。人々は毛沢東への熱愛を私に投射している」と答えるなど、毛沢東の孫であるゆえに、若くして少将に就いた点を否定しなかった。
また、幼いころから甘やかされて育てられてきたせいか、太り気味で、現在は45歳だが、すでに糖尿病や心臓病などの持病もあるといわれている。
江氏が「痩せなさい」と一喝したのは、そのような新宇氏の状況を把握していたためで、当時、江氏が毛新宇と会うのは3回目で、「つい見かねての発言だった」と同誌は指摘している。
また、江氏はその場で、新宇氏や母の邵華さんに「みなさんは生活上で何か問題はありませんか。困難なことはないですか」と尋ねると、邵華さんは「総書記(江沢民)のお気遣いをありがとうございます。もう問題はすべて解決しています」と答えたという。
これに対して、江氏は「主席の家庭や家族は特別な目で見られるから、なかなか難しいこともあるでしょうが、気にしないでやっていってください」と優しい言葉をかけるなどの配慮を見せたという。
これについて、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は「江沢民というと、習近平国家主席との権力闘争などで『権力亡者』などというイメージが強いが、実際は細やかな神経を持ち合わせている一面もあるのではないか」と指摘している。