2016年の年始を飾る箱根駅伝は、青山学院、東洋大、駒澤大が3強だとされている。しかし、2013年には予選会から勝ち上がった日体大が優勝するなど、何が起こるか分からないのが箱根駅伝の面白いところ。どこよりもディープな情報を収集するウェブメディア「駅伝ニュース」の主宰者・西本武司氏(通称・公園橋博士)が、早稲田大学について分析する。
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青学大、東洋大、駒澤大の3強に割って入る可能性がある存在として前号では東海大を挙げたが、もう一校、早稲田大も戦力が充実している。今年は出雲6位、全日本4位だった。
早大といえば、少数精鋭で選手を強化する駒澤大とは対照的に、「エリートと非エリートの融合」が魅力のチームだ。中学3年あるいは高校1年時から活躍してスカウトされたエリート部員と、一般入試で入ってくる非エリート部員が混在しているところが面白い。
今季のエリート組を挙げれば、2年時、箱根の2区区間賞を獲得した高田康暉(4年)は鹿児島実業在学中から、同学年の青学大の久保田や明大の横手らとライバルだった。兵庫・西脇工出身の三浦雅裕(4年)は今年山下り6区で区間賞。同じく西脇工の2年後輩の藤原滋記(2年)も高校時代はインターハイで入賞している。
一方、一般入試組ながら昨年5000mで14分ジャストの好記録を出した井戸浩貴(3年)、早大本庄高サッカー部出身の柳利幸(4年)など、陸上選手として日向を歩いてこなかったメンバーもいる。
早大は大晦日の昼、エントリー16人から外れた部員らが埼玉・所沢にある競走部のグラウンドで1万mタイムトライアルを行なう。非公開練習ながら、ファンの間では「漢祭り」の通称で知られている。箱根出場メンバーへのエールの意味が込められており、ここで競技生活から退く4年生が涙を流しながら自己ベストを更新する熱い光景がある。この記録会を「箱根0区」と表現する人もいるほどだ。
【プロフィール】西本武司(にしもとたけし):1971年福岡県生まれ。メタボ対策のランニング中に近所を走る箱根ランナーに衝撃を受け、箱根駅伝にハマってしまう。一年中いろんなレースを観戦するうちに、同じような箱根中毒の人々とウェブメディア「EKIDEN News」を立ち上げる。本業はコンテンツプロデューサー。
※週刊ポスト2015年12月25日号