永田町には一与野党の国会議員や秘書、国会職員たちの間だけで流行った独特の隠語、符牒、いわば「永田町裏流行語」ある。自民党と民主党の複数のベテラン秘書と政治部記者に今年の裏流行語を選んでもらった。ここでは3つ紹介する。
◆「生牡蠣をドロッと」
安保法制と並んで安倍政権を揺るがしたのが「バカ高建設費」が国民の怒りを買った新国立競技場問題。
五輪の招致責任者で、競技場建設推進の「A級戦犯」と批判された森喜朗・元首相(東京五輪・パラリンピック組織委員会会長)は「みんなが責任取れというから」と坊主頭にしたが、競技場のデザインについて、「僕はもともとあのスタイルは嫌でした。生牡蠣をドロッとたらしたみたいでね」と語り、永田町では「あの生牡蠣はもうダメだろう」と新国立競技場の隠語として使われた。
◆「自民党AMK」
安倍首相も頭が上がらない自民党「長老支配」の“がん”として批判された3人。Aは青木幹雄・元参院議員会長、Mは森元首相、Kは古賀誠・元幹事長。いずれも政界引退した身だが、元自民党参院幹事長の脇雅史氏は「いまだに色々な情報が集まるので面白く、現役に口出しを止めません。この悪循環は断ち切った方がいい」と初めて自民党のウラの権力構図を明らかにした。
「うちの議員が派閥の会合でうっかりAMKといったら先輩の議員に叱られたそうです」(自民党秘書)
◆「粛々と」
政治部記者がこぞってこの言葉をあげた。米軍基地移設をめぐってこじれた翁長雄志・沖縄県知事との関係も安倍政権を悩ませた。
安倍首相は移設反対派の翁長知事の面会要請を6回逃げ回り、菅義偉・官房長官が「基地移設は粛々と進める」と繰り返すと、翁長知事から「上から目線」と反撃されて返す言葉を失った。だが、夜回り取材に対して菅官房長官は「粛々に失礼だ」とオフレコで開き直ったという。
※週刊ポスト2015年12月25日号