通常国会では、安倍政権が鳴り物入りで打ち出した食品への消費税軽減税率導入をめぐって「菅降ろし」が火を噴く。
軽減税率の対象については「生鮮食料品のみ、4000億円規模」を主張した自民党・財務省と「食品全般、1兆円規模」を求める公明党が対立。“官邸裁定”で公明党サイドの完勝に終わったが、その決断を主導した菅義偉・官房長官への怨嗟の声が渦巻いている。
自民党税調や総務会では、「菅独裁だ」と批判の声があがり、麻生太郎・副総理兼財務相も「菅は勇み足をした」と怒りを露わにした。
中でも菅氏に対する復讐心に燃えているのが谷垣禎一・幹事長だ。安倍晋三首相との「軽減税率は生鮮食料品にとどめる」という合意を菅氏にひっくり返されて面子丸潰れになり、「2人の亀裂は決定的になった。谷垣さんは幹事長の職を辞すことも考えたが、それではポスト安倍レースから脱落する。政権内の実力者であることを再び周囲に示すためにも、菅さんにリベンジする機会を窺っている」(党幹部)という。
谷垣氏をはじめとする自民党大物政治家を陰で煽っているのが財務官僚だ。与党協議の最終場面では同省幹部が菅氏から「官邸への出入禁止」を申し渡され、安倍首相への直訴を禁じられる屈辱を味わった。財務官僚が最も警戒しているのは、菅氏が2017年4月の消費税10%への引き上げの再延期を視野に動いていることだ。
「消費税10%はわが省の生命線。増税再延期など絶対に認められない。官邸の菅独裁体制を変えなければ国の財政規律は守れない」(同省中堅幹部)
官僚が政権を揺さぶる時の常套手段はスキャンダルのリークだ。財政規律派の閣僚経験者は、波乱は2月にあると不気味に予告する。
「例えば沖縄基地移設とリゾート誘致関連など菅さんの担当分野で問題が出てくれば、野党は来年度予算案の審議を人質に取って菅さんを攻め立てる。それに呼応して自民党内から“菅更迭論”が噴き出すというシナリオだ。予算案が衆院で採決される2月末までに必ず何か仕掛けがある」