『出没!アド街ック天国』(テレビ東京)で20年間司会を務め、「あなたの街の宣伝本部長」としてお茶の間を楽しませた愛川欽也さんは、2015年4月15日に肺がんで亡くなった。80才だった。
約8年間、共に番組を制作していた同番組のプロデューサー・林祐輔さんは、こう振り返る。
「『街を作るのは建物じゃなくて人だよね』という言葉を何度も打ち合わせで言っていました。アド街は、“なんでこの街を特集したの?”という回もあるんです。なぜ取り上げるかというと、そうした街にも人の息づかいがあるし、おもしろい人が絶対いるんです。この言葉は、アド街のコンセプトでもあります」
愛川さんは面倒見のいい性格だったため、自分の演出する舞台や映画に林さんを毎回招待していた。
「あるとき、舞台挨拶で『人はそもそも、優しいものなんです』と言っていました。愛川さんの作品は人間愛にあふれて、とてもほのぼのしていました。人は優しいというのは人生哲学だったと思います」(林さん)
愛川さんは、太平洋戦争時、母親と疎開先を転々とした。どこの田舎に行っても歓迎されず、いい思いをしなかったという。そうしたつらい体験があるからこそ、「人の優しさ」を説き続けたのだろう。
※女性セブン2016年1月1日号