「アメリカを超える大国」を目指す中国は、その大目標の邪魔になる日本を貶める動きを加速させている。その試みは欧米の識者から日本の「悪魔化」と呼ばれ、警戒されている。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、中国による日本の「悪魔化」の現実をレポートする。
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中国共産党政権が日本をことさら悪として断じ、その善や和の特徴をあえて無視する実態は私自身も1998年から2年余、産経新聞中国総局長として北京に駐在した時期から、いやというほど体験してきた。
小中高校用の歴史教科書は日本について戦時の「残虐行為」だけを誇張して教え、戦後の平和主義、民主主義の特徴はなにも教えない。日本が賠償の意味もこめて中国に供与した巨額の政府開発援助(ODA)など戦後の対中友好外交も教えない。
官営メディアは抗日戦争での日本軍の「侵略と虐殺」の歴史を繰り返し、ドラマも同様に悪逆非道の日本人ばかりが登場する。この反日宣伝の実例は自著の『日中再考』(産経新聞社刊)などで詳述した。
さてこの中国の「日本悪魔化」戦略はアメリカでも中国軍事研究の最高権威によって指摘されていた。1970年代のニクソン政権時代から一貫して国防総省の高官として中国の軍事動向を研究してきたマイケル・ピルズベリー氏の指摘であり、警告だった。
同氏は2015年2月刊行の著書『100年のマラソン=アメリカに替わりグローバル超大国になろうとする中国の秘密戦略』(日本語版の書名は『China2049』)で日本悪魔化戦略を明らかにした。
ピルズベリー氏は中国語に堪能で共産党や人民解放軍の軍事戦略関連文書を読みこなす一方、中国軍首脳との親密な交流を保ってきた。同氏はこの新著でアメリカ歴代政権の対中政策は間違っていたとして「中国を豊かにすれば、やがて国際社会の健全な一員となるという米側の期待に反し、中国は当初から建国の1949年からの100年の長期努力でアメリカを圧することを狙ってきた」と述べた。その世界覇権への長期の闘争を中国自身が「100年のマラソン」と呼ぶのだという。
同氏は中国のこのアメリカ凌駕の長期戦略の重要部分が「現在の日本は戦前の軍国主義の復活を真剣に意図する危険な存在だ」とする「日本悪魔化」工作なのだと明言している。日本の悪魔イメージを国際的さらには日本国内にも投射して日本を衰退させ、日米同盟やアメリカ自体までの骨抜きにつなげる一方、「軍国主義の日本との闘争」を中国共産党の一党独裁永遠統治の正当性ともする狙いだという。