2016年、日本プロ野球は高橋由伸(巨人)、金本知憲(阪神)、アレックス・ラミレス(横浜)の3人の新人監督を迎える。だが、球界きっての智将・野村克也氏はこの状況をひどく心配しているという。野村氏が語る。
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3人の新人監督について、心配なことがある。それは全員が外野手であることだ。80年に及ぶ日本プロ野球の歴史の中で、外野手出身の名監督はいない。
私が名監督と考えているのは以下の5人だ。三原脩(西鉄など)、水原茂(巨人など)、鶴岡一人(南海)、川上哲治(巨人)、西本幸雄(阪急など)。個人的な意見ではあるが、概ね同意してもらえるだろう。全員が内野手である。
もちろん外野手出身の監督は別当薫(毎日など)を筆頭に何人もいた。しかし日本一になった回数が極端に少ない。最近でいえば若松勉(ヤクルト)、秋山幸二(ソフトバンク)が確かに日本一を達成したが、続かないし、この2人は前任者の遺産があったから勝てただけだ。人のふんどしで相撲を取った結果である。
なぜ外野手は名監督になれないのか。これにはきちんとした根拠がある。監督になると無意識のうちに現役時代の経験がベースになって采配を振るうようになる。その点で外野手には致命的な欠点がある。試合中、彼らはほとんど「考える」という機会がない。
せいぜい打撃の時に相手投手の攻略法を考えるくらいだ。他は守備時に打者によって守備位置を変えることくらいは考えるだろうが、それもベンチから指示が飛ぶから自分で考える必要がない。酷い選手では守備中にも次の打席のことしか頭にない。要するに、細かいことにまったく目が向かないのだ。
監督の仕事をやる上で、この細事小事に目が向かないことは致命的である。一部のスター選手を除けば、プロの世界に入れるような各球団の選手たちにはそこまで大きな差はない。どこでチームの成績に差がつくかといえば、監督が細事小事に目が届いて、的確な采配ができるかどうかなのである。
外野手出身の監督は現役時代に「考える」癖をつけていないから、これができない。「言葉」を持たない高橋や金本を見ている限り、現役時代に何かを深く考えプレーしていたとは思えない。そもそも野球を学んできた環境や文化が違うラミレスはもっと不安だ。
※週刊ポスト2016年1月1・8日号