今年のNHK紅白歌合戦がいよいよ迫ってきた。出場歌手は目玉不足といわれるなか、注目を集めそうなのが司会陣だ。白組がV6の井ノ原快彦、紅組が綾瀬はるか、総合司会は黒柳徹子、有働由美子アナが務める。個性的な面々が揃ったが、いったいどんな進行となるのか目が離せないが、テレビ解説者の木村隆志さんはキーパーソンは井ノ原だとみる。いったいなぜか? 木村さんが解説する。
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形式上は「白組の井ノ原さんvs紅組の綾瀬さん」と「中立の黒柳さんと有働さん」という図式ですが、実際はもっとボーダーレスでイレギュラーな進行になると予想されます。
『あさイチ』で変幻自在のかけ合いを見せる井ノ原&有働コンビに、ボケとハプニングの予感プンプンの黒柳&綾瀬コンビをかけ合わせたら……。白と紅の対戦というより笑いの絶えないお祭りムードが生まれるのではないでしょうか。
なかでもキーマンは井ノ原さん。黒柳さんの「自由」、綾瀬さんの「天然」という2種類のボケに対して、ツッコミやフォローを入れる役割が求められますし、有働さんの率直な発言も井ノ原さんが拾うことになるでしょう。
特に、井ノ原さんの隣に立つシーンの多い綾瀬さんは、2年前に司会を務めたとき、1曲目から自分のセリフを忘れたり、美輪明宏さんがコメント中なのに終わらせてしまったりという“前科”があるだけに気が抜けません。
同時に「黒柳さんのマシンガントークをどう止めるか?」「体調不良説を吹き飛ばそうと元気さをアピールする黒柳さんをどう静めるか」という責任も担っています。NHKのアナウンサーという立場上、有働さんは軽くいなすことも、強いツッコミも入れることも難しいため、井ノ原さんの存在が重要になるでしょう。
このように井ノ原さんは、聞き役という陰の立場になる機会が増えそうですが、有働さんとのトークでは自ら笑わせる側に回るなど、グッと存在感がアップ。話がこじれ、波風が立つことをいとわない有働さんの発言に対する、井ノ原さんの「いやいや……」「そうは言ってもさあ」と穏便にやり過ごそうとする姿、「ケロッとした有働さんと苦笑い気味の井ノ原さん」という構図が笑いを誘いそうです。
また、有働さんの独身・脇汗・つけまつげ、井ノ原さんの細い目・ジャニーズ内の微妙なポジションなどの自虐ネタをイジリ合い、ツッコミ役・ボケ役・フォロー役が適宜入れ替わるいつものシーンが見られたら盛り上がるでしょう。
そもそもこの4人は、テレビタレント第1号である黒柳さんの「格」、立ち姿がステージ映えする綾瀬さんの「華」、誰にも嫌われない井ノ原さんの「安心感」、嘘のない生き方で共感を集める有働さんの「等身大」と異なるカラーを持つ、バランスの取れたカルテット。その四重奏は、唯一の男性でアイドルの井ノ原さんが、最も繊細な音色を奏でることで、素晴らしいハーモニーを生むのではないでしょうか。
ここ5年間は嵐の「圧倒的な人気と親近感」が番組を引っ張っていましたが、今年は4人の醸し出す「笑いと脱力感あふれるムード」で楽しませてくれそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。