中国人民解放軍は12月中に北京で、中央軍事委員会拡大会議を開き、陸海空軍を一体的に運用するための統合作戦指揮機構を新設するなどの軍事改革を見据えた大幅な指導部人事を決定することが分かった。
新たな中央軍事委規律検査委員会書記には習近平・国家主席(軍事委主席)に近い劉源・上将(現在の総後勤部政治委員)、新設ポストである統合参謀部総参謀長には蔡英挺・上将(現在の南京軍区司令官)、政治工作部主任には張陽・上将(現在の総政治部主任)らが就くなど習近平色が一層強くなっており、習氏の軍権掌握が進むとみられる。
習氏は11月下旬、北京で開いた中央軍事委改革工作会議で、軍の機構を大幅に改革することを明言。具体的には、これまでの陸軍偏重の体制を見直し、海空軍やミサイル部隊との連携を強化。地域ごとに国防を担う「7大軍区」から「4大戦区」に改編し、統合司令部が統括するなど、中央軍事委直轄の軍事体制の構築を目指す。
一連の改革は2020年までに成果を出すことになったが、2016年1月1日から改革を前提にした中央軍事機構を発足させるのに伴い、年末の軍事委拡大会議で軍最高指導部の大幅な人事異動を発表する。
米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」や香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、中央軍事委政法委書記には趙克石・上将(現在の総後勤部長)が就任、中央軍事委科学技術委主任は劉国治・中将(現在の総装備部副部長)が就く。いずれも習氏に近い最高幹部とみられる。
これに加えて、新設の陸軍総部司令官には李作成・上将(現在の成都軍区司令官)が就任する。李氏は中越戦争の際に軍功をたて、現在の中国軍将校のなかでは唯一、「戦闘英雄」の称号を授けられており、陸軍内の信望が厚い。
習氏は現在の人民解放軍230万人体制から30万人削減して、200万人体制にする人員整理をするが、その大半は陸軍からとみられる。それだけに、陸軍内部では今回の軍事改革に反発する向きが強いことから、「戦闘英雄」の李氏を起用したとみられる。
『習近平の正体』や『習近平の「反日計画」』の著者で、ジャーナリストの相馬勝氏はこの軍最高幹部人事について、次のように分析する。
「今回の軍最高幹部人事では習氏と近い劉源上将がトップを務めている総後勤部からの抜擢が多いことは、習氏が勤務したことがある福建省を管轄する南京軍区司令官、さらには習氏と同じく太子党(高級幹部子弟)からの登用が目立っており、習氏の軍権掌握が着々と進んでいることを裏付けている」