3組に1組が離婚し、4組に1組が再婚する時代だ。100年以上前に作られ、女性にだけ再婚禁止期間のペナルティーを科す“不可思議な法律”に、法曹界の人間さえ首を傾げてきた。2015年12月、1人の女性・A子さんによって、この法の壁がようやく壊された。A子さんは、前夫から壮絶なDVを受け、離婚を決意。2年間の裁判を経てようやく勝訴し離婚は成立。その間に現夫と出会い、お腹の中には彼の赤ちゃんがいたが、民放733条「6か月の再婚禁止期間」が立ちふさがった。
そんなA子さんと二人三脚で伴走した弁護士に話を聞いた。再婚禁止期間の6か月という数字の根拠について、「昔から民法上の謎だった」と作花知志(さっかともし)弁護士は話す。
「民法772条では離婚後300日以内の子供は前夫の子供と推定する一方、再婚から200日以降に生まれた子供は現夫(再婚相手)の子供と推定します。女性が離婚後すぐに再婚すると300日以内と200日以降で最大100日間の重複期間が生じてしまう。この重複を避けるために再婚禁止期間を設けたとされていますが、ならばその期間は100日でいいはずなのです」
にもかかわらず6か月(約180日)と定められたのは、明治時代の男尊女卑文化の名残だという。当時は戸主が一家の権力を持つ家制度があり、女性も生まれてくる子供もその家のものとされていた。
「前夫と現夫どちらの子なのかは極めて重要な問題でした。科学も発達しておらず、再婚時、前の夫の子を妊娠していないかどうかは、女性のお腹の大きさを見なければわからない。離婚後3~4か月では判断がつかないのです。ひと目で妊娠がわかる6か月目まで待って、それでもお腹が大きくなければ、その時点で初めて前夫の子を妊娠していないとわかる。安心して男は結婚できるというわけです」(作花弁護士)
加えて、離婚によってその女性は前の家に恥をかかせたのだから一定の謹慎期間が必要だという応報感情も根底にあったといわれている。
「ようするに“お仕置き期間”だということです。最低でも半年間は反省しなさいと。むしろそちらの意味合いが強いというのが学説です。このように6か月の再婚禁止期間は、前時代の未発達の科学力と女性蔑視観によって生まれた時代錯誤も甚だしい法律なのです」(作花弁護士)
実際、世界的にも女性の再婚禁止期間は廃止される流れにある。1960年代以降、北欧諸国やスペイン、フランス、韓国、ドイツなどで男女平等を理由に次々と廃止されている。
時代の変遷と科学技術の進歩、そして世界中が新たな指針を示している現実を、女性の再婚禁止期間の規定を憲法違反として訴えた原告のA子さんと作花弁護士は真摯に伝え続けた。
※女性セブン2015年1月7・14日号