2015年の角界で最も期待を裏切ったのは逸ノ城ではないだろうか。所要4場所というスピード出世(史上2位タイ)で新入幕を果たし、白鵬と優勝争いを演じるなど常に土俵を沸かせた2014年と違い、2015年は最高で9勝と鳴かず飛ばず。
「2015年中に新横綱か」と騒がれたのがウソのようで、鳥取城北高相撲部の同級生で同じモンゴル人力士の照ノ富士にも大関争いで先を越されてしまった。モンゴルの怪物に今年、何が起きたのか。
埼玉・川口市にある湊部屋の朝稽古を覗くと、逸ノ城は部屋の若い衆に混じり、悲壮感を漂わせながら全身砂まみれになって稽古をしていた。
土俵横でダンベルを使った筋トレを行ない、通常は関取衆が参加しないすり足やまた割り、腕立て伏せまで律義にやっている。湊親方(元前頭・湊富士)も裸足になって横で指導していた。稽古後、ヘトヘトになっていた逸ノ城を直撃した。
「2015年の成績ですか? ……納得できないものでした。親方やおかみさんと話をして、一から出直すことに決めました」
後は何を聞いても「やるだけです」「やるだけです」と繰り返すのみ。口数の少ない逸ノ城に代わって、湊親方が解説した。
「2015年の成績はかなりショックだったようです。が、敗因はハッキリいって『稽古不足』。いずれ壁にぶつかることはわかっていました。
照ノ富士に差を付けられたこともショックだったようだが、あの部屋(伊勢ヶ濱部屋)には日馬富士や安美錦もいるし、稽古の密度は雲泥の差。当然の結果です。
でもこれで良かったんですよ。アイツは勝っている時にいっても聞く耳を持たなかったが、今回はきちんと話し合い、基礎からやり直すことにしました。まだ2日目、すり足などは若い者のスピードについていけない。結果が出るのは早くて3月場所でしょうね」
最後にもう一度逸ノ城に2016年の目標を聞くと、「大関昇進です。頑張ります」と力強く答えた。
※週刊ポスト2016年1月1・8日号