ヒロインの生涯にスポットを当て、その人物像が描かれるのが朝ドラであり、そのヒロインを引き立てるのが他ならぬヒーロー。
そのヒーローこそ、“時代の映し鏡”だと言うのは、『あさが来た』に、福沢諭吉役として出演した武田鉄矢(66才)だ。武田は、ありし日の母を涙させた往年の朝ドラのヒーローを語ってくれた。
「ウチの母ちゃんたちが、きゃあきゃあ言いながら夢中になっていたのが、『おはなはん』(1966~1967年)だね。夫が日露戦争へ出征する前夜、おはなはんが軍人さんの帽子をかぶって、“戦死は許さん”って夫に命令する姿を、母ちゃんが泣きながら見ていたのはよく覚えている。戦後20年くらいしか経っていない時代だから、『日本男子』や『日本兵』のあるべき姿がたっぷりと映しこまれていた」
当時31才だった高橋幸治(80才)が演じた、夫・謙太郎は途中で死ぬことがわかっていたため、視聴者から「殺さないで」と嘆願が届くほどファンがついた。
そして、その翌年から放送されたのが、国鉄職員を描いた『旅路』(1967~1968年)だ。ヒーローを横内正(74才)が演じ、『おしん』に次ぐ歴代2位の視聴率をマークした。
「まだSLの時代に、国鉄職員は日本の女たちの憧れの職業だったのよ。今でいうと飛行機のパイロットみたいな職業かな。ほら、振り返れば、どの時代でも朝ドラのヒーローには尊敬とか憧れとか、“女性たちの求める何か”が映りこんでいる。それは同時に、それぞれの時代の女性の生き方を映す鏡でもあるんだよね」(武田)
※女性セブン2016年1月7・14日号