お正月といえば、親戚や家族とワイワイといったイメージもあるが、国勢調査によると、8人に1人以上はひとり暮らしをしているという。元日から仕事始めまでの日々を、ひとりの人は何を食べ、どう過ごしているのか。
「大量の食材と、お菓子、お酒と大量のDVD。実家にいるときは強制的に食べなくてはいけなかったおせちもお雑煮も、好きじゃないので作りません。ご飯は普段より豪華にかに鍋とか。あとはお腹がすいたら、冷凍のうどんをチンして食べたりしています」(茨城・会社員・38才)
こうした自由すぎるひとりのお正月は「気持ちが荒れそう」と言うのは、千葉県のパート、M子さん(70才)だ。彼女は60才で離婚し、2015年でひとりの年越しは10年目。2人の子供は結婚して、年越しは向こうの親と一緒に過ごしている。おひとりさまだからといってダラダラ過ごさない。
「うちに子供が来るのは3日ですが、31日には長年の習慣でおせちを用意します。かまぼこやだて巻きとか、子供が好きなごぼうのきんぴらを作ってお重に並べると、お正月が来たなと、ちょっと晴れがましい気持ちになります」
そんな彼女も、初詣をしに行くのは「参拝者もいなければ、神主さんもいないような小さな神社」だ。
ひとり暮らしを楽しむためには、季節の行事を取り込んだほうがいいと提案する『ひとり暮らしの季節ごよみ』の著者、河野真希さんは話す。
「私は、小さな松の入った花を飾り、元日には新しいお箸をおろします。気分が一新していいものですよ。でも、ほどほどですよね。元日のお雑煮は、1度だけひとり用をちゃんと作りましたが、手がかかりすぎ。インスタントの松茸のお吸い物に焼いた餅を入れるだけで充分でした」
無理しない範囲で行事を取り込むことが、新年に向かって前向きな気持ちになる秘訣のようだ。最後に、医師で医学博士の狭間研至さんから、ひとりで年末年始を過ごす人に2つの忠告。
「普段は食事に気をつけている高齢者も、年末年始は『縁起物だから』と無理してお餅など、むせやすいものを食べたりしがち。それで命を落とす人が毎年、何人もいます。家でダラダラ過ごす人は、昔ながらのストーブにやかんを置いて加湿器代わりにするのも要注意。お酒を飲んで寝入ってしまい、やけどをしたり、火事になりかねません」
ひとりだからこその充分すぎる気楽さ、そして孤独と危険が交わるのが、お正月。そんな隣の芝生がますます青く見える人がいるのも、またお正月なのだ。
※女性セブン2016年1月7・14日号