中国の長老指導者の1人、賈慶林・元党政治局常務委員が昨年12月18日、福建省連城県の遺跡などを視察し、昨年9月3日の抗日戦争勝利50周年記念の軍事パレード以来、約3か月ぶりに姿を現した。
賈氏は今秋、東南諸国を外遊する予定だったが、中国当局によって、出国停止処分を受けているなどと香港メディアが報じており、今回の福建省視察は報道を否定し、健在を誇示する狙いがあるとみられる。
米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「多維新聞網」は連城県観光事業局の中国版ツイッター「微信(ウェイシン)」の公式アカウントが掲載した賈氏の視察中の写真をもとに報じた。
賈氏は連城県の歴史遺跡である培田古村落や、冠豸山景区、これらの遺跡の由来などを展示している博物館など数か所を廻った。写真では賈氏ら一行6人に福建省政府や連城県政府の幹部、遺跡担当者ら10人以上が視察に同行するなどものものしい態勢。
賈氏はすでに引退して3年ほど経っているものの、いまだに強い影響力を維持していることを表しているようだ。
賈氏については、江沢民・元主席を中心とする上海閥の大幹部で、常務委員在任中から巨額な収賄疑惑のうわさが絶えず、最近も中国最大の不動産デベロッパー、万達グループの王健林・会長から株式上場前の同社の未公開株を供与されていたと報じられていた。
このため、党員の不正を取り締まる党規律検査委員会が賈氏周辺を捜査中との情報のほか、最近では賈氏の出国禁止報道もあった。
今回の突然の福建省での視察について、多維新聞網は「このような捜査情報を否定する狙いがあるのは間違いない」と報じている。
また、『習近平の正体』などの著書もあるジャーナリストの相馬勝氏は「賈慶林氏が福建省に現れたことに大きな意味が隠されている」と指摘したうえで、次のように解説する。
「賈慶林氏は1985年から1996年まで福建省の党委副書記や党委書記を務めている。習近平主席も1985年に福建省の厦門市副市長として赴任して以来、その後、ずっと賈氏は習氏の上司として、習氏を幹部に登用するなど重用してきた。
その後、習氏が上海市トップに就任したり、党政治局常務入りした際も、賈氏は習氏より序列が上で、影響力を行使してきた。とくに、習氏は福建省時代、賈氏に頭が上がらなかったはずだ。賈氏が今回わざわざ福建省を視察したのも、『昔の恩を忘れるな』などと習近平氏に無言の圧力をかけるためだろう」