今は治療法が確立されていない病でも、5年後なら──そんな期待を抱かせる、多くの興味深い研究が世界各国で進められている。
例えば、手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、3D内視鏡や7つの関節を持つロボットアームを備えており、危険を伴う精緻ながん手術を容易にする。操作は「自分が患者の体内に入って手術している感覚」(ダヴィンチを使用した医師)だという。
高額のため限られた機関にしかないが、5年後はさらに普及すると考えられる。また、早期発見が肝心のがんだが、2015年3月、九州大学などの研究チームは、「線虫」に人間の尿を嗅がせ、がんの有無を判定させる論文を米科学誌に発表した。
線虫を入れた容器にがん患者の尿を1滴垂らすと、線虫はその尿にぴたっと寄りつく。逆に健常者の尿からは逃げるように離れる。体長約1mmという線虫は嗅覚が鋭く、研究チームはがん患者の尿の微妙な違いを嗅ぎ分けたと推定する。
研究チームが242人の尿で実験したところ、がん患者の発見率は95.8%だった。がんの種類は嗅ぎ分けられないが、尿検査だけで「がん疑い」がわかれば、がん検診の受診につながる。研究チームの九州大学大学院・広津崇亮助教が今後の見通しを語る。
「私たちは3年後の実用化を目指しており、実際の検査費用は数百~数千円で済むと思います」
※週刊ポスト2016年1月1・8日号