昭和の大横綱亡き後の角界は混沌としている。相撲協会は12月18日に定例理事会を開催。第13代理事長に八角親方(元横綱・北勝海)を選出することを決定した。八角親方は北の湖・前理事長の急死後、理事長代行を務めていた。協会関係者によれば、「もともと八角親方の昇格は既定路線だった」という。
「しかしこれを承認する形式的会合のはずだった理事会が予想外に紛糾した。終わるのに2時間以上もかかってしまった」(同前)
理由は参加者の1人が、八角理事長の推挙されることに「待った」をかけたからだという。
「貴乃花親方です。初場所後には2年に一度の理事改選が行なわれる。“それをもって3月には新体制が決まる。今、ここで慌てて決める必要があるのか”との動議を出した。会議は紛糾、八角理事長の承認は八角親方を除いた11人の理事(うち外部理事3人)による無記名投票で問われることになったんです」(同前)
結果は理事長就任に賛成6、反対5の僅差。からくも八角理事長が誕生したものの、北の湖氏を欠いた執行部が一枚岩でないことを露呈した。何故、貴乃花親方は反対を唱えたのか。相撲ジャーナリストはこう分析する。
「この段階で“代行”が取れると、そのまま八角理事長体制が続く可能性が高くなり、理事選が形骸化するおそれがある。改革派の貴乃花親方としては、一度選挙をして理事を改選したうえで理事長を選ぶ形を取りたかったのではないか。反対票を投じた他の親方も同じ理由でしょう。実は次回の理事選は史上稀に見る大混戦になると予想されていて、八角親方ですら確実に当選する保証がないですからね」
この反対動議が新たな波紋を生み出したといわれている。古参親方の話。
「“北の湖体制を継承する”といっていた八角は、当初は自分が理事長になれば、貴乃花を協会ナンバー2の事業部長に任命、北の湖構想に沿う形で後の理事長就任へのレールを作るつもりだった。
ところが今回、事業部長になったのは尾車(元大関・琴風)。尾車はかつて貴乃花が割って出た二所ノ関一門であり、反貴乃花の急先鋒。つまり貴乃花への当てつけのように見える。八角はまだ52歳、長期政権になる可能性もある。貴乃花理事長の誕生は、かなり遠のいたといわざるを得ない」
※週刊ポスト2016年1月15・22日号