2016年は、テロを拡散し続ける「イスラム国」にどう対処するかが、国際社会の課題となるだろう。
その意味でも、オバマ氏の後任を選ぶアメリカ大統領選挙がとりわけ注目に値する。2月1日のアイオワ州党員集会で予備選挙の口火が切られ、民主、共和両党とも7月には候補者を決定。その後、候補者討論会などを経て11月8日に雌雄を決する。その行方を、国際政治アナリストの菅原出氏はこう見る。
「選挙期間中に大規模テロが発生するなど国内外の情勢が動けば、争点も大きく移り変わる。そのため、どの候補者が有利になるかはまったく予断を許さない。日本への影響としては、今後も『米中関係のはざまにある日本』という構図に大きな変動はないだろうが、新しく選ばれる大統領と習近平・中国国家主席の関係次第で日米関係が左右されることも考えられる。やはり新政権の対中政策は注目だ」
その中国を取り巻く情勢で見逃せないのは、1月16日の台湾総統選挙だ。中国と距離を置く野党・民進党候補の蔡英文氏の圧倒的優勢が伝えられており、8年ぶりの政権交代が確実視されている。選挙後、中台の緊張が高まる可能性がある。
5月26~27日には、オバマ米大統領、キャメロン英首相、オランド仏大統領、メルケル独首相ら先進7か国の首脳が一堂に会する伊勢志摩サミットが開催される。中国の海洋進出問題に加え、ここでも「イスラム国」への対応が議題に上るだろう。
「欧米やロシアは、それぞれ中東にパートナー国家を持っている。ロシアならシリアのアサド政権やイラン。アメリカならトルコやサウジアラビア。欧米やロシアが対イスラム国で協調しようにも、シリアやイラクに隣接し、より切迫感のあるトルコやイラン、サウジが自国の利益のために争っているのが現状だ。16年はその傾向が顕著になり、イスラム国を取り巻く情勢は混迷を深めることになるだろう」(菅原氏)
国際的な連携を強化し、テロの拡散を押しとどめ、世界に秩序を取り戻すのは容易ではない。加えて、欧州はかつてない規模で押し寄せる難民の問題を抱えている。難問が山積する中、先進各国の首脳はリーダーシップを発揮できるか。
また、12月18日には日本が国連加盟60周年を迎える。その節目の年に、11回目の国連安保理の非常任理事国に就任することになる。近年は国連での中国のパワーが予算面でも人員面でも増している。常任理事国で拒否権を持つ中国を前に、日本は存在感を高めていかなければならない。
※SAPIO2016年2月号